VS完璧な夏
私に完璧な夏が訪れて、世界は静止した。コングラッチュレーションズ!祝福のBGM。エンドロール。スペシャルサンクス。
グランドフィナーレのあとで、私は静止した完璧な世界をなぞる。完璧な夏を迎えた私も、当然完璧なはず。なのに気持ちが盛り上がらない。クレームを入れると、夏直前のセーブデータを渡される。さっそく私はプレイする。
ところで私の先輩は完璧な人だった。選択肢を一つも間違えない、そういった類の完璧さ。興味本位で近づいた先輩との夏で、私はフルコンボされたのだ。もう一回遊べるとは流石に思いもしなかったけど。
せっかくの再演が同じように終わってはつまらない。反骨精神で先輩の悪い点を探すけれども見つからない。二度目の夏も三度目の夏も完璧な夏にされてしまう。ならばと自宅に籠城しても、完璧な夏が向こうからやってくる。
いくら素敵な完璧でも、終わりは虚しい。完璧な夏は完璧であるが故に続編も追加コンテンツもない。私の胸のときめきも、やがては過去になるだろう。
だから次は、先輩に選択肢なんて与えない。セーブやロードがなくたって、私はあなたを好きでいたい。完璧の先へのトライアンドエラーは始まったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます