コピペのあなたで十分だった

 後輩と些細なことで別れて数日後、街で見かけた彼女は、俺にそっくりな男と歩いていた。一方俺の隣には、後輩にそっくりな彼女がいる。

 後輩そっくりな彼女は、外見が同じでも中身は当然異なる。その彼女ともしばらくして別れることになる。再び別の後輩似の彼女と付き合うことになる。別れる。付き合う。別れて、付き合う。似たようなことを繰り返していると、気づいた時には、俺の周りには後輩似の女の子ばかりいた。

 後輩から連絡が来る。どうやら向こうも同じ状況らしい。彼女のメールに添付された写真には、俺とそっくりな顔の男が、俺の着ない服を着て、俺の行ったことのない場所で彼女の隣にいた。あんまりな違和感にかえって笑えてきてしまう。

 紆余曲折の末、後輩とよりを戻すことになる。すると後輩似の元カノも俺似の元カレも、嘘のようにいなくなった。これで万事解決だと二人で祝杯をあげる。

 めでたしめでたし、では終われない。今の俺には、後輩が元の彼女に思えない。きっと彼女も同じことを思っている。吸っていなかった煙草を、つけていなかったピアスを、塗っていなかったネイルを、聴いていなかった洋楽を。かつての相手と違う要素を見てしまう。俺はこれから後輩そっくりな彼女に別れを告げる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る