8/24 愛酒の日
先輩の死因は凍死であった。日本酒を胸に抱えた往生である。冬の日には「酒で暖を取る」などとふざけて話すこともあったとはいえ、こうなっては笑い話にもならない。
そして現在、若くして灰になってしまった先輩は、当時の姿のままで目の前にいる。先輩の遺品として貰った一升瓶、それに憑いていたのが見えてしまったものだから、遺族に頼んで拝借したのだ。
酒好きは死んでも治らないのか、魂にまでアルコールの回った先輩との同居生活が始まる。とはいえ、なにをするわけでも、また、されるわけでもなかった。唯一の変化といえば、週末金曜夜に、自宅で酒を飲むようになったことだ。
昔から、お酒を好んで飲むことはなかった。けれど、先輩が生前のように、あんなにも愛おしそうに酒に憑いているものだから、うっかり飲んでしまうのだ。
もしかしたら、先輩は悪霊で、自分の死因と同じように私を殺そうとしているのかもしれない。仮にそうなら、迂遠な祟り方にもほどがあるのだけど。
それでも、先輩になら殺されてもいいのだろう。だってお酒はこんなにもおいしいのだから。そんな馬鹿なことを、アルコールの回った頭で考える。
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