きゅうり

 突然きゅうりしか食べられなくなった。きゅうりは低カロリーなのでダイエット中はいいのだが、栄養価も皆無なので死に一直線であった。南無三。

 と、不本意な死に方をする直前に、先輩によって私は一命をとりとめた。きゅうりにソースをつけて食べれば問題ない、というのは抜け道にも程がある。

 とはいえきゅうりとソースだけでは物足りず食いでがあるお肉が恋しくなって私はつい目の前のお肉にきゅうりを勢いよく突き刺すと赤くて黒いものが流れて何度も何度も刺せばやがてきゅうりは染まって口に入れて食べると鉄のつんとくるような苦い味がしてでもおいしくて止められずに私は食べてしまうもったいなくて床に落ちたソースも舐めとりそれでも足らなくて。

 私は外に出た。外にはたくさんのきゅうりが生っていた。きゅうりは最初から中にソースたっぷりでわざわざ浸ける必要もなく食べやすい。インスタントでファストフードだ。収穫し放題だからいくらでも食べられるし腹も膨れる。

 でも最初に食べたおいしさはなかったから、先輩にあれはなんのソースだったのか聞いてみようと思ったのだけれど答えは返って来ない。

 当たり前だけど。

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