　男女平等は達成された。いや、達成というのもまた違うのかもしれない。なにせ、性別の概念そのものがなくなったのだ。

　神様にアップデートされたみたいに、あるいはエイリアンが成り代わったように、世界から雌雄の概念はきれいになくなって、無性の徒となった。生殖器は消え失せて、性欲なんて微塵もない。人間だって、いまや生殖行為の代わりに、アメーバみたいに増殖して増えるのだ。増殖が二人でしかできないのは、旧時代の名残だろうか。

　さて、ところで私は先輩のことが好きだった。先輩も私のことが好きだった。しかしそれもかつての話。性別という区分がなくなり、性欲という指標がなくなったあと、元と同じものとはとても言えない。自分が昇華させたのではなく、外から無理やり歪められてしまった感情は、もはや信用ならない不出来なイミテーションにすぎないのだ。

　示し合わせたわけではなく、先輩と会うことはなくなった。先輩と後輩、その繋がりさえいつか消されてしまうのかもわからないのだ。それなら綺麗な過去でいられるうちに、自らの意思で離れた。そうするのが、私の最後の恋だった。