奪われた心、露知らず

 朝起きたら横で後輩が寝ていた。ベッドから落とすべく足を突き出すもすり抜ける。後輩に電話したら生きていたので、生き霊か、あるいは他人の空似というやつだろう。試しに部屋に盛り塩を添えると爆発した。悪霊か?

 後輩(霊)は、外出中も俺についてくる。肩が重いと愚痴れば、後輩(生きてる)は私の方がつらいぞと目の前で胸(Gカップ)を持ち上げてくる。やめなさいはしたない。彼女は俺を異性と意識していないので、頻繁に恥ずかしげもなくこういうことをする。後輩(霊)はそうでもないようで、顔を真っ赤にしてから両手で俺の目を隠す。かわいい。

 いくつか除霊を試してみるも、何一つ効果は出ない。毎朝後輩と同じ顔か胸が視界に入る生活を送る。肩が重い以外に害はないので、段々どうでもいい気もしてきた。しかし後輩はそうは思わないらしい。用心棒だと袖を捲って俺の部屋に上がり、飯を食い、酒を飲み、ゲームをして、俺のベッドで勝手に眠る。起きる時か寝る時かの違いだと、気にせず俺も後輩の隣で寝る。

 翌朝、後輩と同じタイミングで目が醒める。後輩は顔を真っ赤に染めて部屋を出ていった。霊もどこかに消えてしまった部屋は、心なし広く感じる。

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