無粋もなければ伝わらない
後輩は私に何をするにしても、事前にやることを宣言して私の了承を待つ。心臓が弱い私にとっては、その配慮だけでだいぶ助かる。にしても人を崖から突き落とすのはよくないと思う。本当に死ぬかと思った。
私が一つも断るそぶりを見せないものだから、最初は控えめだった後輩も、今では無茶振りにためらいがない。殊勝に先輩と呼んで慕ってくるが、果たしてどれだけ真に受けてもいいものか。
興味本位で、初めて後輩の宣言を断る。後輩は相当ショックだったようで、私をナイフで刺し殺す。それも事前に宣言済みで、了承済みのことだけど。
死体になった私は後輩の家に連れていかれる。こんな風になった私に対して、後輩は変わらず、何をするにも了承を求めてくる。死後硬直で固まった肉体は、声を出すことはおろか、首を縦にも横にも動かすことができない。だからわざわざ殺して家に連れ込んだのに、後輩は律儀に指一本触れることさえしてこない。
そのうち後輩は、私の隣で横になる。口に出してはいないけれども、これくらいならいいですよねと、後輩の揺れる瞳が言っている気がした。
君のすることなら私は何でも受け入れるよと、伝える手段があればいいのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます