小指の赤いウロボロス

 私の小指の赤い糸が先輩の小指に絡みつく。赤い糸を通じて、先輩から好意とか生気とか血とかが流れてくる。色々吸われる先輩は、日に日に衰弱していく。赤い糸は私から自立していて、動かせないし触れられない。先輩が衰弱していくのを、私は見ているしかない。

 解決方法は知っていた。この赤い糸は、相手と物理的に離れれば外れる。先輩を死なせたくない私は、これまで何度もしたように、先輩と距離を取ろうとする。しかし先輩は離れてくれない。先輩は私を追って、地球の裏側までやってくる。

 衰弱していく先輩はそれでも私のそばにいる。どうしてここまでするのだろう。馬鹿そのものだ。でも目の下にクマのある先輩はかっこいい。などと思ったのが運の尽き。今度は私の好意と生気と血と諸々が先輩に逆流する。そんな馬鹿な。

 先輩に色々吸われて、私は次第に衰弱する。吸われる立場は初めてだ。先輩は今までこんな調子だったのかと、申し訳なく思う。けれど、目の下にクマもない先輩を見ると憎たらしい。などと考えたのがよかったのか。流れは再び逆転する。

 私が元気になる。先輩は衰弱する。私が衰弱する。先輩は元気になる。その繰り返しを続けるうちに、行き着く果てがここでもいいかと、諦めもついてしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る