ふわふわのある、素敵な日常

 町がふわふわの犬に占拠された。私たち人間は、ふわふわの犬を撫でなければならなくなる。ふわふわの犬に対して、人間は無力だ。銃を向けることも、拳を握ることさえできない。ふわふわの犬を前にしたとき、人の手は撫でるためにある。あるいは写真を撮ってフォルダを潤し、時にはSNSに上げていいねを稼ぐためにあった。

 ふわふわの犬による支配、その首謀者は他ならぬ先輩であった。ふわふわの犬、先輩、その他。今ではそれがこの町の階層だ。

 ふわふわの犬がいる日常は天国だ。これで先輩さえいれば後は何もいらないのだが、あいにく先輩は支配者としての仕事に追われていた。膝の上のふわふわの犬に見向きもせず作業をしていることからも、忙しさが伺える。

 ところで、先輩は猫派だ。なのにふわふわの犬を連れてきたのは、私が犬派であると話したからであるかと問えば、自惚れるなと一蹴された。

 人は順応するもので、ふわふわの犬がいる日常にも次第に慣れてくる。最近では移住者も増えていて、先輩はますます忙しそうだ。

 私の日常に、先輩が戻ってくるのは一体いつなのだろう。ふわふわの犬を撫でながら、私はその日を待ち遠しく思う。

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