変わらないものは黄金

 後輩が貝になったから、私は水槽で飼うことにする。それにしても、後輩がなったものが金塊ではなく貝でよかった。金塊は重くて持ち運びにくい。誰かに盗まれるのではないかと、家に置くのも気が気でない。

 いつも元気溌剌だった後輩は、貝になったくらいで丁度いい。物静かな二枚貝は艶やかで、どことなく彼女の面影がある。それにしても、私が見ている間は、後輩は貝を開こうとしない。意志疎通のできない今、わかるはずもない。

 実を言うと、私は昔から後輩のことが好きだった。貝になった今もその気持ちは変わらないのだから、本物といってしかるべきだろう。私は好意を表すため、そして後輩を生かすために手間を惜しまない。水槽の中で、後輩が生きるための環境を完璧に整える。もちろん、後輩はなにも返さない。だって貝なのだ。後輩は私の前ではいつだって閉じたまま、同じ姿のままだ。

 水槽の砂を換え、水を換え、餌をやる。なにも返さない後輩に、次第に間違いをしている気分に追いやられてしまう。私の手間暇も、後輩を海に返せば済むことだ。窮屈なアクアリウムは、私のためにこそある。

 どうするべきかと、私は後輩に問いかける。二枚貝は変わらず閉じている。

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