第7話 カン違いです、おっぱい様

 わけが分からず、僕はポカンとする。

「いや、……何、言ってるんですか??」

 しかし。

 僕のその反応に、「なッ」と宮歌さんは何を思ったのか、

「こんなのじゃ、まだまだ全然足りないと言うのですかあなたは! あなたという人はッ!」

 よくわからないことを言って両手を床につき、……土下座を……って、

「いやいやいや! 何してんすか宮歌さん!? やめてください!!」

「離してくださいッ! 今あなたに私なりの、誠意ってヤツをお見せしますからッ!」

「いや得体の知れない異性からの土下座とか、ただひたすらに怖いだけですから!! 誠意とか微塵も感じませんから!! 頼むからやめてくださいお願いだから!!」


 両肩へ手をやって、半ば強引に床から引きはがす。

 宮歌さんは煌びやかな金髪を振り乱して僕を睨み、「くぅ」と悔し気な声を漏らす。……なんでだよ。

「……一体どういうことなんですか。……宮歌さんに、その、……謝る理由はあっても、謝られる理由はないと思うんですがッ」

 困惑のままにそれを言葉にして伝えると、

「え」

「え?」

「え、ええええええ!!??」

 負けないくらいに相手が混乱した。

「そ、それは与えた損害が大きすぎるあまり、一般的な謝罪など聞く理由すらない、みたいな一周まわった謝罪の要求ですかッ!?」

「何だそのめんどくさい要求ッ!? 違いますよ! むしろ謝るべきなのは僕の方なのでは、ってことです!」

「それこそワケがわかりません! どうしてあなたが私に謝るんですか! やはりこれも一周まわった何か別の……」

「周ってないんで! 一ミリたりとも動いてない直球なんで! ……は、まさか逆ッ!? 今宮歌さんがしていることこそが、逆に僕への一周まわった謝罪の要求ってこと!? それならすべての辻褄が……」

「……あ、いえ、それはないです」

「ないの!? 発想の転換からの真相解明じゃないの!? てか自分からこのくだり引っ張ったくせに、ばっさりなの!?解釈が何周にもわたって周ってたんじゃないの!?」

「ワケわかりません。……何、言ってるんですか?」

キョトンとする彼女に、僕は「ぐうう」と可愛くない動物のような声を出す。

(……このままじゃ埒があかない)

 ついに諦めた僕は、直接きいてみることにしました。


「じゃ、じゃあ、仮にですよ、仮に。宮歌さんのその主張が、そのままの意味だとして、……君は一体、僕に何を謝ってるんですか?」

 

 その質問に、彼女はまたしても「な、」と憤った顔を見せる。


「勘違いしないでくださいッ! 別にあなたに謝ってるわけじゃありません!!」

「ええー? いや、もうホント何言って……」

 僕がいよいよ呆れかけた時、目の前の金髪転校生は、その僕の様子が心底心外だったらしく。

「も、もとはといえば!」と。

 彼女は一歩前にでて、僕を指さし、


「あ、あなたが謝れって言ったんじゃないですか!」


 そして再び薄い唇をそっと動かす。


「……お」


 ……お? 

 続けて発音された言葉は、聞きまちがいのないほど明瞭に言われたその言葉は。

 彼女の整った顔からは、とても想像できないような七文字でした。


「――おっぱい様にッ!!!」


 

 ……。


「ええええええええええええええええええーーーーーーッ!!??」





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