第2話 おっぱい教徒とおっぱい様
……はい、そうです僕です。
現野夢人、と書いて、おっぱい星人と読む。稀代のおっぱい好きにして、常におっぱいのことしか考えていない、煩悩男子高校生、現野夢人です。
かと言って別段イケメンでもなく、勉強もスポーツも大してできるわけでもなく、クラスでも地味で友達もいない、いわゆる陰キャの僕が、本物のおっぱいを見たことがあるわけもなく。(ええ、ないですよ、何か問題でも!)
その一方で、おっぱいに対する多大な好奇心と、溢れ出る思春期的衝動によって形成された、対異性・視姦バイアス「選胸眼」(!)により、日々すれ違う異性の胸を、その大きさとカタチによって分類、格付けする、残念こじらせおっぱいフェチ。
例えば、僕、現野夢人は同クラスの前座席女子、白井あやかさんのことを、内面ではこう呼んでいる。
――『B75お椀』!!
……もはや戦車みたいだけど、解説するとこうなる。
まず、「B」はブラジャーのカップ数。
次の「75」はバストトップの数字で。
最後の「お椀」が「おっぱいの型」。
……みたいな感じである。
……どうですか、引いたでしょう! あはは、照れるなぁ!
(いやあ、僕ぐらいになるとね、もう全校女子生徒のバストサイズとか、カップを暗記しちゃってるくらいですからね。ぶっちゃけもう顔とかどうでもよくて、どっちかというと、胸の特徴で女子を見分ける方が楽と言いますか……)
……まぁ、僕にとって女性という存在は、……はい、しゃべるおっぱい、みたいなもんですかね。ええ。
……。
……なんて、周囲にカミングアウトできるわけもなく。
日々細々と。
可はなく、どちらかといえば不可の方が多い、それでも平凡な陰キャ男子高校生を演じ。
周囲のおっぱいを目で追いながら、心の中では、常におっぱいで荒れ狂っている。
それこそが、僕のこれまでの日常だったはず。
……なのに。
(――なんだ、この非日常的な神おっぱいはあああああッ!! チラッと観察(要約:ガン見)しただけでも、バスト88、カップ数Fもあるよッ!? そして何より……)
僕は密かに、拳から血を流すほど握りしめ、
(おっぱいの型が、日本ではめったに見られない『半球型』とはあああおおおおおおおおおおおッ!!! うおおおおおおおおおおおおおおお!!)
声にならない絶叫を、一人何度も繰り返す。
要は、驚きとか感動とか、よくわからないものが胸をひしめくあまり、僕は極度の興奮状態に陥っているのです。ギリ精神崩壊の手前といっても過言ではありません。
それは、彼女が転校生として朝のSHRに参加した時から。
「学校の案内を兼ねて」と、担任の隠れ蓑をまとった職務怠慢に、一緒に付き合わされることになった時も。
資料整理を始めた早々に、校内放送に呼び出された担任が、僕らを残して資料室を離れた時も。
そして今に至るまで、僕の脳は崩壊寸前なのです。
そんな状況で、普段すごく気を遣ってやっと人並みに会話できるコミュ障の僕が、彼女との間を持たせられるはずもなく。
もはや彼女、宮歌・F・88半球さんのほうを、まともに直視すらできない状態のまま、ただ黙々と資料整理を続ける、という地獄をかれこれ十五分は味わっているのです。
……きゅ、救助要請を申請するであります、軍曹!
そっと密かに敬礼をしつつ、疲労やら緊張やらで心の涙を流す僕。
F・88半球さんはというと、同じように気まずさを感じているのか、黙々と自分の作業を――、
「……あの、……疲れました、ね……?」
――中断して僕に話しかけてきているだとッ!?
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