第23話 おっぱい様と純情


 ……え、即答!? 即答って何ッ!? だって告白だよ!? しかも了承って! 何その軽さ!! 前代未聞だよ!? メインヒロインがこうもやすやすと別の男と付き合うラブコメなんてあります!? ……いや別にこれラブコメじゃないけどさ!


 僕がだくだくと脂汗をかきながら唖然としている前で、


「……マジで? じゃあさ、まずはライン交換してくれ」

「ハイッ、わかりました」


 早々にライン交換し始める、できたてほやほやカップル。

 極めつけには、チャイムに急かされた別れ際、


「じゃ、じゃあ俺、先もどるわ」

「ハイ、ではまた」


 バタンと屋上の分厚い扉が閉まり、ふう、と宮歌さんが息をつき、


「じゃあ、私たちも戻りましょう、現野く」

「いやちょっと待った」

「? なんですか、遅れちゃいますよ、授業」

「いやいやいやいや、そんなことより」

「?」

「…………何、今の」

「はぁ、何と言われましても。見たままですが」

「いやいや確かに見てたよ? 見てましたとも最高の特等席で。……でも何? え、まさか本当につきあうの?」


 僕がおそるおそる青い顔で尋ねると、


「……ハイ。もちろんです。だって断る理由がありません。願ったりかなったりですし」


 なんか異常なほど爽やかな笑顔で返してきやがった! 


 ……コイツ、さては純情を装いつつ、実は相当の肉食系ビッチだったのか! ふざけやがってこの裏切り者がッ! しかもよりによって相手はイケメンだと!? たった今お前は僕をはじめとした世界中のぼっち童貞を敵に回したぞ!!


「……そんな露骨に睨まなくても……。……あ、わかりました! ふふん……さては現野くん、羨ましいんでしょう!?」


 投げられた手袋を、僕は高速で拾う。


「き、貴様――ッ!!!!!!! 許さんッ!!!」

「やれやれ、これだから現野くんは。……友人の幸せを素直に祝えないなんて、クラスに馴染めないのも頷けますね」

「おのれ淫乱ビッチが!! その汚れた口を閉じろ!!」

「むぐぐぐ、ちょ、なにするんれふか」

「……うるさい! この……この……リア充! 非処女! もう誰も信じない!!」

「……なんで現野くんが涙目なのですか。……というかさっきから黙って聞いてたら、さすがにひどいですね。……撤回してください! 私、れっきとした処女ですからねッ!!」

「……嘘だ! 処女が愛の告白受けて、あんなに鮮やかに即答できるわけがない!!」


 ぷるぷると真っ赤になって情けなく指摘する僕へ、宮歌さんは「え?」と虚をつかれた顔をする。

「……愛? あはは、現野くん何言ってるんですか、愛なんてないですよ?」

「ないの!? 愛ないのに即答したの!?」

「……わたしはただ……」

 と、その後に続いた宮歌さんの言葉は、



「……乳首ドリルがしたかっただけです」



「――なおさら悪いわッ!!!!!」




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