第2章「変態ちくドリ少女とのラブコメは、カラダだけの関係じゃありませんっ」
第19話 幼女が先か、おっぱい様が先か
――突然ですが、あなたは人類の起源をどう思いますか?
……え? なんで急にそんな胡散臭い宗教みたいなことを尋ねるのか、だって?
いやだなぁ、胡散臭くなんかないですよ、ただの純粋な知的好奇心というか、ほら、よくあるじゃないですか、普段何気なく思ってたことへ、唐突に疑問が生じてたまらなくなる、あれですよあれ。子どもがよくなるあれ。普段はマセておっぱいおっぱい言ってる僕も、いまだ立派な未成年だということですよ。
まぁ、とにかく。
人類の起源について、日本での一般常識は進化論なわけです。そうです、腰曲がったサルが次第に背筋伸びてきて、気が付くと人間になってたという。
ところがどっこい世界を見渡すと、これがまたおもしろいことに、進化論を歴史上の事実として教えている国だけではないのですよ。
進化論によって否定されたはずの創造論、つまり、神が人間を造ったという前提の考えも、未だしっかりと生きていて、かつ最新の科学にも適合するように進歩しているのです。
科学の発展により、様々なことが解明された現在でも、人の起源についてはまだ不透明な部分が多く、その全容は未だ謎なままです。
――さてさて、ここでみなさんに、「ニワトリが先か、タマゴが先か」というパラドックスをご紹介させてください。
ご存知の方も多いと思いますが、
「もし、ニワトリが先なら、そのニワトリのタマゴは誰が生んだのか」
「もし、タマゴが先なら、そのタマゴを生んだニワトリはいないのか」
というように、どっちを選んでも矛盾するという、大変どうでもよくめんどいヤツです。
正直、僕はニワトリもタマゴもどっちでもいいと思うのですが、
……さっき、いや、たった今、気付いたんです。
――この問題、おっぱいと幼女に置き換えられるということにッ!!
「もし、幼女が先なら、その幼女は誰のおっぱいに育てられたのか」
「もし、おっぱいが先なら、そのおっぱいは幼女のころ無しにどうやって育ったのか」
どうですか、全国の変態紳士淑女の皆さま!!
どうでもいい机上の空論が、一気に萌えとエロスを伴った、僕たちの命題へと様変わりしたでしょう!?
しかもそれでいて人類の起源もにわかに語っているという、自分で言うのもなんだけど、まさに、天才的なひらめき!!!
そして純然たるおっぱい教徒たる僕の、この命題に対する答えはたった一つ!!
……すなわち、
「――一番最初に、おっぱい様一択じゃあああああああーーーーーーッ!」
「――うるさい、バカ兄貴ッ! 朝っぱらからおっぱいおっぱい連呼すんなッ!」
ハッと意識が現実へと引き戻され、
気が付くと、僕の目の前には、眉を吊り上げた可愛い幼女……、
「……ねぇ、今、おぼろのこと幼女だと思ったでしょ? ……マジ迷惑極まりないんだけど、そのキモオタ思考のステレオタイプ。やめてって何度言ったらわかるのよ」
……もとい、僕の妹、現野おぼろ(中学2年生)が、これまた可愛らしいエプロン姿で、僕を睨み付けていた。
すっかり自分の世界に没入していたが、思い出した。今は登校前に妹と二人で朝食を食べていたのだった。
「……ご、ごめん。……いやね、ちょっと人類の起源に関わる考え事を……」
「絶対ウソだね。ていうか兄貴の考え事は基本的に、最後は全部おっぱいになるじゃん! 全然意味ないんだから、早く朝ご飯食べちゃってよ、めんどくさいッ」
自分の空になったお椀を乱雑に流し台へ置き、おぼろは不機嫌そうに吐き捨てる。
そう言いながらも、しっかり一汁三菜朝食を作ってくれ、かつ洗い物のために待っててくれる健気な妹。しかも中学生とはいえ見た目は幼女だし。……ああ、お兄ちゃん冥利につきるの……、
「視線がキモい!! あと顔も! そしてまた幼女とか思ってたな、今ッ!」
「は、はおはひおいお!? ひふははんへも(訳:顔はひどいよ!?いくらなんでも)」
「事実じゃん! 実際兄貴のキモさは折り紙付きだよ!? ……え、もしかして自覚ないの? 今すぐにでもしなよ、じ・か・くッ!」
「……ぷはッ、妹よ。己はなんだ、もぐ、朝っぱらっから兄の、もぐ、兄の心をバキバキに折って何がしたいのだ」
口に味噌汁と白米を頬張りつつ抗議すると、
おぼろは何やらそっぽを向いて。
「……別に。兄貴が悪いんでしょ」
……あれ? なにやらホントにご機嫌斜め感?
「……えと、……どしたの?」
「さぁ。知りたきゃ自分で聞いてみれば? ……大好きな自分の胸に」
嫌味なニュアンスのトーン、プラス、ジト目で我が妹が僕の歩み寄りを拒否する。その一方で「自分の胸」という妹の言葉から、僕の脳裏に昨日の出来事が想起された。
『待ってください現野くんー! 先っぽ(乳頭)、先っぽだけでいいからー!』
……。
「……あのさ、おぼろ。……ひょっとしてだけど、昨日僕が金髪の女子高生に全力疾走で追われてるとこ、見てたり?」
「――ッ! そそそんなこと知らない、けどッ?」
見るからに顔を真っ赤にし、途端にたどたどしくなる実妹に、
……やっぱりですかー。
朝一でやってきた、非常にめんどくさい釈明の機会へ、僕は大きくため息をついたのでした。
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