第3章「あれは乳首ドリルをしてたのであって、けして子づくりとかじゃありませんっ」
第38話 おっぱい様と、彼女の朝
「おっぱい」というコトバがあります。
つい先日まで私は、おっぱいというのは、もっと滑らかですべすべだと思っていました。指でつまめばするりとすり抜け、突けばその弾力で指が押し返されるような。少なくとも、それまで唯一の比較対象だった、私自身の乳首がそうであるように。
おっぱいは、柔らかくてきめ細かいものだと。
それまで画像と妄想の世界で生きてきた私は、至極当然のように、まるでこの世界の常識のように、そう思っていたのです。
――あの日、彼の乳首に触れるまで。
……まるで本当の雷が落ちたかと、私は錯覚しました。
(……あれ……、柔らかく、ない? 滑らかじゃ……ない!?)
その感覚は、今まで何度となく触れてきた自分の乳首とは、比べるのもおこがましいほどの差があって、一瞬本当に自分が今触れているのが、乳首かどうか疑うほどでした。
(……何…ッ…これ? ……硬くて、ゴワゴワしてて、弾力なんか全然なくて、でもその控えめな突起と粗暴なブツブツが、突くたびに貧相に凹んで……なんというか、なんというか)
そこで私は、自身の内側から湧き上がる感情の正体を悟りました。
(――か、可愛いッ! なにこれ可愛い! しかもこうしてじっくり見てると、心なしか突かれて凹んでる様子が悔しそうにすら見えてきますしッ! ああ、なんていじらしいのでしょうか! どうなるのでしょう、もっと攻めたらイジメたら!! ……ああもう、我慢できません、私に、私に、乳首ドリルさせてくださあああああ――)
ππππππ
「――ぅ、あれ?」
気が付くと、私は自分の部屋のベッドの上でした。
時刻は、午前五時。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、私にいつもより数段早い一日の始まりを告げています。
「……私、ねおち、してたのですか」
私はしばらく呆け、……そして、とっても大きなため息をつきます。
「はあああうううう」
……時間とは、なんと残酷なものなのでしょうか。
最近の私にとっての心のオアシスこと、『生乳首とのエンゲージメントの思い出、無限ループ回想』が今日も終わってしまったなんて。
「……あのまま、時が止まってくれたら……」
突如楽園から追放された絶望から、生気のない声でそんなことを口走っていると。
「ふぁ!? ひ!?」
ガタンと、誰かが何かにぶつかる音がして、同時に小さな悲鳴が上がります。
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