投資家≒節約家?

 彼の資産もわからなければ仕事の内容も理解できなかったが、私よりも広い部屋に住み、実際に何か仕事はしているようには見えないことから


「とりあえず彼は一般よりお金持ちなんだろう」と思っていた。


 今まで裕福な男の人と付き合うことがなかったものだから、本当に未知の世界だった。だがしかし。お金持ちと付き合えば贅沢させてくれると思うなかれ。彼は驚くほどに倹約家だった。数えればキリがないほどにそのエピソードが出てくる。


 食事時、何気なくティッシュを数枚取った瞬間だった。


「一枚で十分でしょ!他のは箱に戻して」


 そう言って彼は瞬時に一枚のティッシュ以外を奪い去ると元の箱に戻してしまった。


 それから部屋の電気をつけて少し別の場所に行き元の部屋に戻ると消灯されていることもしばしば。


「使わないなら消して!」


 私がつけたそばから消していく。背後霊か!


 浄水器をオンにしたまま手や食器を洗ったりしても「フィルターがッ!!!!」との声が飛んでくる。


 食べ物を残しても怒られる。食べられる分だけ出しなさいよ、と。……アンタ親か!!



 ある日、私がトイレに入っていると彼がノックをしてきて


「カギ開けてくれる?小春が来ると、やけにペーパーの量が減るからどのくらい使っているか確認させてくれない?」


 と言ってきた。…そこまでかい!?


 いつもは自宅と変わらずカラカラカラ~~と勢いよく出すのだが、そこはもちろん


 カラカラカ……といつもの半分くらいをおずおずと差し出す。


「ワタシツカッテル、ダイタイこのくらい。」


「ふむ…おかしいな…そんなもんか…。」


 と彼を丸めこんでトイレのカギを閉めると静かに追加ペーパーしたのは言うまでもない。そのあと彼が嬉々とした顔をして私にこう言ってきた。


「わかった!女性だからだね!‘’少‘’にもペーパーが必要だもんね!」


 謎が解けたと言わんばかりの嬉々としたその表情を見て、私は最早苦笑いするしかなかった。


 そのほか彼はブランド物にもほぼ興味はなく、洋服もユ●クロ、ジー〇ーを愛用している。さてさて財布はいかがだろうか。なんと千円ほどのノーブランド。そのうち百円均一になりそうな勢いだ。


 お金持ちって超ケチって話聞いたことがあると思うのですが、あれ、本当なんです。ただ、資産を買うことは別。何にお金をかける必要があって、何にはかける必要がないのか、それを知っている。


 彼の生活を垣間見、なぜお金持ちがお金持ちなのかが何となく見えてきた。


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