ブラック訪問者
「おい、お前一体今どこにいる!!!!!」
突然のコールの相手は新山だった。なぜ居場所を伝える必要があるのか分からなかったが、新山の剣幕に押され居場所を伝えるしかない私はとある行きつけの海岸にいることを伝えた。
「お前は!そこには神様が住んでいるってわかってんのか!!お前のビジョンがチカチカ出てくるからおかしいと思って電話してみたら…今私が震えなから電話しているのがわかるか!?私もお前のマイナスなエネルギーに関わりたくないし、どんな気持ちで電話しているのか、分かっているのか?!とにかくその場から立ちされ!!お盆も近いというのに!!!!!」
誰か助けてください、本当にわけが分からないよ。
スマートフォンを持つ手は細く震えていた。恐怖で耳に当てることができない受話口からは彼女の怒号が途切れることなく響き続けている。
ガクガクと震える身体で車に乗り込みエンジンをかける。まだ彼女は大きな声で何かを喚いている。
「新山さん、今ちょうど海岸公園からで出ました…。」
やっと振り絞った声で海岸から離れたことを伝えると、彼女の声は幾分か落ち着いたようだった。
「よかった。私はあなたを救いたいの。わかって」
「…わかりました。ありがとうございます…」
なぜ私が感謝の言葉を述べる必要があるのかよくわからなかったが、誘導されるようにその言葉が口から出てきたことを覚えている。しばらくの間、激しい動悸が止まらなかった。
その後、逆上されてしまうのではないかと拒絶できずにいたが、友人に諭されるままに新山をブロックすることにした。
しかしLINEをブロックするとFacebookからメッセージがきた。Facebookをブロックするとショートメールが来た。最早サイコでしかない。
そんなある日、私は自宅で友人の訪問を待っていた。もうそろそろ友人の訪れる時間だなあ、とゆっくりお茶をすすりながらぼーっとテレビを眺めていた時だった。
ピンポン。呼び鈴が鳴った。
おや、友人にしては少し早いなと思いながら習慣になっている玄関のスコープを覗く。そこに映ったのは、黒いサングラスに全身真っ黒な衣服を纏った新山だった。ショックでよろよろと後ずさると、頭に浮かんだのはあの借金殺人事件だった。
______私が何したっていうの…やっぱり、さ、刺されるの私?
「おーい、小春~いるんでしょ~こはる~、こ~は~る~~」
ドアをノックしながら低い声で私の名前を連呼する。
もう新山はあのころの新山じゃない。きっと完全におかしくなっていて、もう私の手に負える代物じゃない。友人や人間関係を自ら断ったことは人生で今まで一度もしてきたことはなかったが、この人は切らないといけない。
私は居留守使うこともできず、半べそをかきながらゆっくりとドアを開けた。
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