理解されないお仕事

「そういえば、小春の彼氏って何の仕事してるんだ?」


 仲のいい職場のおっちゃんが隣で作業しながらそんな質問をしてきた。


 この定年間際のおっちゃんは噂によると土地持ち=資産家=お金持ち、らしい。

 不動産のことは全く知らないし、そこまで興味もなかったのだが周りの皆が福山さんはお金持ちだと噂しているのでそうなんだろう、くらいにしか思っていなかった。


「私の彼?…えーと個人投資家……。」

 資産がある人なら理解してもらえるかなあなんて思ったのが間違いだった。


 「ハァ?なんだそれは!そいつはダメな奴だ!お前騙されているんじゃないか?」


 あーやっぱそう来るよね、うん覚悟してた。


 「俺の周りにも先物取引だとか失敗して文無しになったのもいる!あれはギャンブルだ!そいつ、本当は金持ってないぞきっと!やめとけ!」


「…あーでもね福山さん、彼、最近将来の事考えてマンション買ってるし、投資歴10年超えてるし……リーマンショックも乗り越えてて、私も教えてもらってるから尊敬してて…。」


 「もーだめだな、オマエは完全に騙されてるな!その金はオレオレ詐欺とかで得た金だろうよ。」


 スゴイ。投資家という返答からものすごい彼の虚像ができている。最早苦笑いしかない。まあよくあることなんだけど。

 そのあとは福山さんの固定資産税大変だとか老後の備えの話をひたすらきく側になるしかなかったのは言うまでもない。なんだか不動産持ちも大変そうだな。


 ___不動産といえば苦い思い出がある。


 私の両親は人生で2回も新築戸建ての家を買った。


 1度目は支払い不能に陥ったが売却で利益を出した。凝りもせず2回目の家の購入後に再度訪れた滞納のあと、その家を手放せずに維持し続け競売目前に業者に安く買い叩かれてしまった。


 あのころは悲惨だった。りっぱな一戸建てに住んでいるのに毎日のように鳴るサラ金会社からの督促電話。


 毎朝、毎晩、両親の喧嘩。ガスと電気、切られたこともあったけな。高校も中退させられそうになったもんだ。そうなるまでは比較的裕福だったのに。


 今はお金の勉強をしたからわかる。家は資産じゃなくで負債だと。


 私の両親はそのことに関して無知だったのだ。

 家庭をもって、家を建てて一人前、のようなものがあの当時の人にはあったんだろう。


 まあこれは過去の話で、残ったローンの返済は最近終わったようで娘の私もほっとしている。でもあんなに頑張っても手元には何も残らなかったね、父さん。


 大人になった今、そんな状況でも子育てしてくれた母さんの苦労を考えると涙が出そうだ。だからと言って短大を卒業後にいきなり「親戚のおじさんに入学金50万返してね」っていうのは卑怯でしょ!


 もちろん高校も短大も奨学金です。入学金も奨学金も全額自分で返済しましたよ、ええ。合わせて数百万近かったんじゃないかな。奨学金をかりる家庭はそもそも生活にも困ってたりするから奨学金生活費に使いこまれ事件とか起こるよね。


 そう、奨学金とは借金です。

 卒業後に足かせつけた人生のスタートを切ることになるのを忘れないこと。


 という思いを馳せながら彼に固定資産税は大丈夫なのかと問い合わせたら

「新築から5年以内は安いからどってことない。」

 とのお答えが。


※固定資産税は全国一律、課税標準額に対して1.4%

 どうやら5年ということは長期優良住宅の固定資産税の軽減…税額1/2×5年のようだ。


 彼が購入したのはほぼ新築の中古マンションだ。中古なのでそれなりに新築より値が落ちている。そして立地。


 ちなみにイ○ン銀行の金利がとても安い!と喜んでいたのでお金借りたい方はイ○ン銀行まで。(回し者じゃないです( ´∀` )


 本人は住宅ローンを使い所得税減税も目論んでいたようだがそこはサラリーマンより信用の弱い個人事業主。住宅ローンの審査を通ることはなかった。


(中小経営者や社長・個人事業主は普通のサラリーマンより審査が厳しいようです)


※長期優良住宅の場合最大500万が減税となる。


 彼は入居前に部屋の中を何度も丹念に調べて業者が嫌がりそうなくらいに細かい注文を付けていた。

(私が不動産屋ならイライラしそう。○ホームの方お世話になりました)


 もちろん彼はその後の事を考えている。売却だ。資産価値として全てをみているのだ。猫犬可能部屋なのに価値が落ちると飼ってくれないし…。ちえっ。


 そもそも私もその家に住まわせてもらってないんだけれども。いつまで通うことになるのかな?ヒロトさん?




 うちの両親も「投資なんて怪しい仕事だ!!」って口を揃えて言っていましたよ。とほほ。

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