株主優待の世界へようこそ
「小春、お米いる?優待でもらったけど要らないから、欲しかったら貰っていいよ。」
仕事部屋から出てきた彼はそう言って3キロの新米をくれた。
「あと、このドリンクも好きなのあったら持って行って。」
さらに伊藤園の優待品のいくつかを袋に入れてくれる。
※伊藤園<2593>茶葉製品・緑茶飲料最大手傘下にタリーズコーヒー。
業種:飲料 時価総額6/22社 優待:自社製品(緑茶・ジュース等)自社製品割引など。予想配当利回り0.77 予想配当4000~4500円 現在株価5140円
もちろん喜んでいただくことにする。もっとくれよ。おっと、お口は閉じておこう。
「でさ、今日はイオンのラウンジにコーヒーでも飲みに行こうか。」
※イオン<8267>国内流通二強の一角。M&Aで成長。
業種:総合スーパー 時価総額1/9社 優待:優待カード(保有数に応じた割合で買い物金額に対し返金)、自社ギフトカード 2000円相当~10000円相当。
予想配当利回り1.92 予想配当1800円 現在株価1877.5円
その日の午後、彼の優待カードを使いイオン店内にあるイオンラウンジに私は初潜入を果たした。
小さい子供を連れた女性や、年配の夫婦、一人でコーヒーをゆっくりすすりながらくつろぐ女性、気難しい顔でひたすら新聞をめくる男性。裕福そうな人から、普通の人まで様々だ。
……え!全員が株主なの?!
(調べたところ、どうやら株主でなくとも入室可能なようだが少なくともイオンカードをイオンで 年間50万以上利用しなくてはならないようだ。)
視線だけを泳がせながらソファーで縮こまる私に、彼はおもむろに新聞を差し出した。
___日本経済新聞。なんだこれ、一度も読んだことがない新聞だ。
そもそも新聞も幼い時にテレビ欄と四コマ漫画を見るくらいでほとんど読んだことがない。
えっと新聞て、割れ物の包装に使ったり、ガラス拭いたり、読み物以外の用途は沢山あるよね。うん。
軽く目を通してみる。が、目がチカチカするし、無茶苦茶かたっ苦しい文体だ。もちろん一行も頭に入ってこない。
「…久しぶりに縦の文字読んだ…おぇ…。」
「あー…だめだこりゃ。」
頭を抱えて大きくのけぞる彼が可笑しくて、私はケタケタと笑った。
「あのねえ、君ももう株主になるんだから、投資家として日経くらい読めないといけないよ?」
「え?私、投資家なの?えー新聞はいいよ、何書いてるか意味わからないし。そもそもネット世代← だから縦字、読めない…。」
彼は大きくため息をつくと諦めた顔で新聞に目を落とし、静かに自分の世界へ入っていった。
※株価や優待は変動します。優待や会社情報は四季報参照による。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます