初めての売買

 確か、初めて「売買」したのは日経225mini<1578>だったと思う。


 彼は基本的に答えを教えてくれない。自分で答えを見つけなさい、そういうスタンスだ。私は何の為に傍にいるのか、教えてくれなきゃ意味がない!と憤慨していたのだが、もちろん彼はどこ吹く風である。


 とりあえず好きな会社や好きなブランドや食品などからヒントをえてその会社の株価を検索する。そこで初めて私のなかで「株」と「株式会社」が結びつき始める。


 マネーゲームのように感じる「株」だが、あの大きな会社もこの毎日CMで見る会社も株式会社だ。なんだか混乱してきたぞ。どういうことなんだってばよ。


 意味が分からないと発狂する私の傍で、彼が呟いた。


「初心者なら個別より国内株式のところからETF…。」


※ETF(イーティーエフ)・・・上場している投資信託。一般的にETFの方が信託報酬などの手数料などが安い。


 もちろんすぐに検索する。証券サイトを検索すると、前々から不動産に興味があり、欲しいと思っていたREITもすぐそばにあった。


※REIT(リート)・・・不動産のプロが運用する不動産投資信託。配当が高めなのも魅力的。日経平均とは違う動きをするのも特徴。

※配当・・・要するに投資(会社に資金を貸し出す)したことによってもらえるお金。あまりに高い配当利回りはリスクを伴うことも。



 とりあえず早く売買を経験してみたい。予算は一万円だ。あ…そういえば昔友人がオーストラリアドルだかなんだかがいいとか言ってたな。オーストラリアってよくわからないけどきっと資源も沢山あるし、いいのかもしれない!よし閃いた!ここはオーストラリアだ!


「ねえ、オーストラリアの何かを買いたい!ヒント!ヒント何かちょうだい!」


 彼はしばらく新聞を読みふけるふりをして無視を決め込んでいたが、しつこい私に根負けし、ひとつオーストラリアの投資信託(非上場)を教えてくれた。


 MHAM豪ドルファンド(毎月決算型)だ。五千円分を購入した。どうやら私が購入した分では毎月20円~30円の配当があるようで、放置しておけばいいとの事。


※現在は減配しており毎月1円。購入後一度も触っておらず数年放置している。

追記:減配や信託報酬(手数料)などのコストパフォーマンス要因からすでに売却済。2019/8月現在。



「卵は一つのカゴに盛るな」だ。よしよし、次はさっきヒント出してくれたETFね。


 とりあえず私はどこが何に投資しているのか、どんな内容なのかもわからずに残り五千円で買えるもの・・・ということでその一覧の中からお手頃な価格の日経225mini<1578>を一口だけ買ってみた。


 1565円程で購入したように思う。(現在1660円程度)


「何買ったの?」


「ん、一応これ。」


「…なんでそれにしたの?」


「え…安かったし…。」


「何に投資してるかわかってる?」


「知りません…。」


「それの信託報酬いくらかわかってる?」


「……」


「やり直し。」



 ということで私は早々に売却することになってしまった。結果として初めての売買が成立し、「7円」くらいプラスになったのだ。たかが七円、されど七円である。


 しかしこの‘’一円の刻み‘’がボディーブローのように個別株で影響するものとは、その時の私には知る由もないのであった。




※日経225mini<1578>・・・日経平均株価に連動を目ざす上場投資信託。分配金利回り1.44% 信託報酬0,234%


※日経平均株価・・・日本の株式市場を代表する225銘柄の平均値。(トヨタ自動車・資生堂・キヤノン・三菱商事・イオン・ファストリ(UNIQLO)など)


※「卵は一つのカゴに盛るな」・・・分散投資、リスク分散を表す格言。王道の投資法、色々な投資を組み合わせることによって運用リスクを分散せよという意味。一方で卵をひとつのカゴに盛れという(あえてリスクをとれ)という考え方もある。






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