債務者から債権者へ
「おめでとう。これからは払う側から、もらう側だね」
彼に新たに保有した
___そうか、なるほどそういうことか。
以前の銀行からの借り入れは彼に急かされ半年もしないうちに完済していたのだが、‘’借金を返していた私‘’と、‘’金利をもらう私‘’の立場が完全に入れ替え変わった瞬間だった。
借金を返済している自分の姿が、蜃気楼のようなもやの向こう側に見える。
※簡単にいえば債権者・・・モノやお金を貸し出している側。債務者・・・モノやお金を借りている側。
不思議だ。何か生活が変わったわけでも、大金を手にしたわけでもないのになんだか生まれ変わったような感覚だった。
___お金の生まれる仕組みの一つは、ずばり誰かが払っているんだ。
でもこれは私が労働したわけでも、ましてや誰かを騙したわけでもない。それと同時に世の中にあるローンやリボ払いがどれだけ「ヤバイ」か理解することができた。
それはずっと相手に自分のポケットから余分にお金を差し出し続ける行為だ。お金が貯まらない人、お金に苦労している人がなぜそうなるのかはきっとそういうことのひとつに気づいていないのかもしれない。
私の得ることができた分配金はたった「150円」だったが、なるほど倹約しなければすぐに吹っ飛ぶような微々たる収益である。
それからの私は無駄な買い物が明らかに減った。
‘’お金に対する価値観‘’が変化したのだ。せっかく投資でお金を得ても散財していては増えるものも増えない。
それが一円でも十円でも、お金はお金である。
増えた分をどう守るか、それらをどう働かせるか。
その日、おもむろにティッシュペーパーを抜きとろうとした私の手がふと止まる。一人ぼっちの自分の部屋で、一枚の紙が抜き取られる乾いた音が静かに響いた。
雀の涙ほどの給与からなけなしのお金を追加し、投資金額は5万円になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます