私、個人投資家と付き合ってます。

松生 小春

非正規、恋愛を語る。

 前略、私は非正規である。正社員として働いたことは未だない。そんなアラサーの私の彼氏は個人投資家だ。仕事のない時間帯は近所を散歩と称して徘徊しているオジサンだ。


 世間の皆様があくせくと働く日中に、優雅にホテルバイキングを頬張りながらPC画面をいじくっている。


 そして自宅ではいつも半裸で大きなモニターを見つめている。その画面のはじにはお気に入りのAVがチラリと映りこんでいる。


 さすがソムリエである。時には約定と同時に果てることもあるとか。


 ※約定とは株式売買などの成立のこと。


 一方の私といえば冒頭で述べたようにアラサーになったこれまで正規社員として働いたことはない。


 今現在の仕事も、契約の終了を間近にしている崖っぷち身のである。去年度の源泉徴収は年収200を下回っていた。涙なしには語れない。


 とは言えタイムカードもなく店舗責任者であったのに時給850円で有休もボーナスもちろんない、所謂ブラックの前職よりも今の会社方がましだというのがこれまた涙を誘う。


 有給休暇とは、なんて素晴らしい響きなんだ!そしてこの会社は副業もOKダ。


 ちなみに退職後にその前職の社長は夜逃げしたという風の噂を耳にした。


 そんな全く違った二人が出会ったのはよくある飲み会の席だった。


 当時彼氏と別れて程ない私は荒れていた。忘れるため、それから結婚を焦っていた私は未婚独身の友人らを誘っては飲み歩く日々を送っていた。


 独身の私の身を案じた母を言いくるめ、婚活代と称して毎月一万円を無心していた。しかしあの頃は本当に金に困っていたのも事実だ。


 私の状態を見かねた友人がお米以外に食品も買えるから、とお米券をくれたときは申し訳ない気持ちと食いつなげる安堵感と妙な気持になったのを覚えている。


 そんな状況の中での婚活なものだから金がないと結婚活動の土俵にも立てないのだという事実が心底辛かった。


 タイムカードのない職場で毎日サービス残業をし、ヘトヘトになりながら少ない給与での一人暮らしと週末は安い飲み会へ参加したり、時には飲み屋街を散策、人が集まるバーへ足を運び、安い一杯で誰かに声を掛けられないかとナンパ待ちをしてみたりとありとあらゆる出会いの場所に独身の友人らと行った。


 一人、またひとりと婚活サークルの友人たちに彼氏ができていった。


 私にもロマンスがひとつもなかったわけではない。職歴も変わったものだが男性遍歴も百戦錬磨だ。その多くは負けているのだが。


 そんなこんなでその中の一人を搔い摘んでB男を紹介したい。

 B男20代後半・・・出会い・バー/職業・バーテン/趣味・バンド活動

 これだけでこの物件のヤバさがお分かりであろうか。いい年の女が絶対手を出してはいけない物件である。


 だがしかし身体というのは正直なものである。

 ナニを言いたいかっていうと身体の相性の合致には抗えないということだ。(もう一度くらいお相手願いたいと思うのは心の中だけにする。)


 世に言われるやめとけシリーズの3B(美容師・バンドマン・バーテンダー)の二つも当てはまる男にはまるなど愚の骨頂であるというのに。

 そもそもあえてそんな条件の男と出会える確率がすごい。


 昔ある人に言われたのだが

「お前はなんであえてクズの中からさらに選りすぐりのをクズを選ぶんだ!?」


 なんかあってる。というかむしろ自ら選び抜いている。


 そんな関係も、彼の「俺、コンビニ店員になろうかな!」という破壊力ありすぎなセリフにぶちのめされ目が覚める。


 その後も関係性はだらだらと続くのだがまた別の男が介入し、大変面白い終わり方を告げる。


 本当にまったくもって恋愛経験と恋愛偏差値は比例しないのだ。

 私にとってはね。涙。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る