売買のヒント その④ ウワサの使い方と関連銘柄

 ネットというものは本当に便利である。探せばあれが良い、これがアツい、これこそ高騰する、と色々な会社の名前が挙げられている。どこの誰とも分からない書き込みに、時々ふうん、そうなのかと思わず頷いてしまう。


 何が真実で何が嘘かもわからない大量の書き込みの海に、真実らしきことを探すのは実に骨が折れる作業だ。根拠を探しても見つからないどころか、そのアカウント元を辿るとあちこちで全く同じ発言や、企業の名前を変えては似たような情報をさも見聞きしたかのように書き込んでいる人も少なくない。株の評価サイトのアナリストもなんだか胡散臭く感じてしまう。


「ねえ、ヒロさんこの書き込み本当にそうなの?」


「僕の忠告はよく無視するのに、ネットのは信じるの?まあいいけど…。」


 彼は私のスマートフォンにさらっと目を通しにやりと笑うと


「大した事書いてないよ。みんな株価上がって欲しくて自分の希望を書いてるんじゃないの。まあ、たまーに、本物が降臨することも確かにあるけど、一言ズバッと切り込んでさっといなくなるんだよね。あ、ひとつ言うと、掲示板を見ることでどんな人達が株主なのかわかることもあるよ。レベルの低い変な書き込みばっかの所は…ま、そゆことだな。」


 ちなみに私は太陽光発電システムの会社の株を保有していた。なぜそれを買おうと思ったかというと、エコエネルギーと株価が300円以下の手軽さに惹かれたのだ。それともう一つ、その会社の技術が「ノーベル化学賞」の関連銘柄であるという、まことしやかな噂の熱気に当てられたというのが真相だ。といってもネット上で資料を漁って見つけた情報は、開発者がいて、その人が技術を提供した会社があり、その二つも三つも後にこの会社が存在している。説明はかなり大雑把だが。確かに関連しているといえば関連しているが…。


 とはいえ、ノーベル化学賞は確実!なんて激しく熱気のこもった書き込みもちらほらみられる。きっとその技術やその関連事業が注目され、多少はつられて上昇するに違いない。単純にペロブスカイト太陽電池の研究開発記事もかっこいいな、と思えた。彼はひどいチャートだと口元をゆがめていたが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る