私は算数ができない

 今では嘘のようだが、私は中学2年生まで割り算が出来なかった。正直なところ現在でも数字はまだまだ得意な方ではない。


 そんなんだから、税金や給与などお金に関することにもとても疎く、支払いの請求が来ては払い、もらった給与が本当に正しいかを今までほとんど計算したことがなかった。特に酷かったのは、若かりし頃の市県民税の滞納・督促エピソードである。


 うろ覚えで申し訳ないのだが、その当時某自動車メーカーを辞めて地元に帰ってきた私はいわゆるニートだった。うたかたのニートを謳歌しようとしていた。


 税金は前年度の収入に応じるというが、なんとその年の国保・市民税が合わせて20万~30万の納付書として郵送されてきたのだ。(正確な数字は失念)


 …まさか全額このニートに払えと?払えるわけがない!


 ____そして市役所に向かう。

 成人後初めてこんなに市役所を利用することになった私は非常に戸惑った。何処に相談したらいいのかてんでわからない。とりあえずそれっぽい名前のところに行こう。


 うーん国保の請求だから国保年金課かな?


 担当窓口の人は社会保険に入れば会社が払ってくれるよ、と教えてくれた。それからここではできませんとのことで、市民税の相談に市民課だか何だかにも足を運ぶ。市役所のたらい回しってこれか、心の中で呟いた。


(その後、税金で路頭に迷うわけにもいかず、私は仕方なく短大で専攻していた保育士になることになる。高額の国保はこれにて解決である。)


 市民税の担当窓口は淡々とこう私に伝えた。


「市県民税は‘’免除・減額‘’はできません。しかし支払えないなら分割も可能です。」


 高すぎると思うがしょうがない、と市民税についてはしばらくは毎月一万円ずつ払っていたが、ある日を境に支払いを滞らせてしまった。

 まあ、年金みたいに払わなくてもどうにかなるさ、そう高を括っていたのだ。


 __それが大間違いだった。


 半年ほど放置したのち、役所から‘’最重要‘’と真っ赤な文字を押印された督促状が届く。


 私は暢気なもので「はいはいなんですか、また分割したらいいんでしょう?」と、その体でいたものだから開封してぶっ飛んだ!


 9万円の残金に追徴課税がなんと『七万円』!!!!おいサラ金か!!!!!!

 市民税のお支払いは合計で16万になった。今まで支払った分がほぼ元に戻ったようなものだ。


 役所ってサラ金より怖いよう…。恐怖で身を震わせ、また市民税課へ向かった。


 …市県民税は逃げられないって聞いてたけどマジこれか…。


 市民課窓口は感じのいい女性担当者で


「滞納分は分割の相談に来ていただけれは返されますよ~」


 と、ホッとさせてくれたのも束の間で、分割納付書はきっちり「16万円分」作られていた。滞納した罪悪感から何も言えず、その後支払ったり滞納を繰り返し、すべての支払いが済んだのは三年後になる。


 __果たして私は追徴課税その他諸々にいくら無駄金を払ったのだろうか。

 あの過払いは本当に返還されたのだろうか。すべてが謎のままである。


 あぁ、あの頃の私をぶん殴りたい。


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