私、個人投資家と付き合ってます。

株と為替、どっちが好きですか？

「私も投資、始めたよ！」

　会社の仲の良い年上女性が休憩中の私に話しかけてきた。

「あ、利香さん疲れ様です。とうとう始めるんですね～！なんです？株ですか？」

　私は思わず前のめりになった。同じような話題ができる人が少ないのもあり、ついついテンションが上がってしまう。

「んふふ、私はね、バイナリーオプション。オンライン講習にも申し込んだんだ。ＬＩＮＥにあるグループに、受講生が数十人もいてさ！」

「え、そうなんですか…大丈夫なんですかそれ？」

　彼女は食事をのせたトレイをすっと私の前に置き、椅子を引き寄せ座席する。そしてさらに饒舌にその詳細を教えてくれた。

「フェイスブックで見つけた講師なんだけど、考え方もしっかりしてるし大丈夫だと思う。生徒もたくさんいるし、なにより熱いの！彼の志。それから毎日そのチャット内で数万円儲けたとか何万プラスとか、みんな本当に凄いの！」

「ほ～…。」

「ちなみに受講料、３０万くらいしたんだけどね！ダンナには内緒よ！」

「えー……それ、本当に大丈夫ですか？」

　彼女はなにやら取り出したスマホを無言で弄り始めると、ニヤリとこちらを見つめた。

「ふふ、この1分で500円稼いだよ。私は沢山稼ぎたいし時間がないから''コレ''にしたんだ。株は勉強とかいろいろ難しそうだしさ。」

「そうなんですか…。」

　私は何も言えなかった。

　私の投資額はまだ5万ほどで、そこから得た利益も数百円程度だ。１分で５００円の利益・・・確かに株よりは賢い選択なのか？

　それに正直、為替やバイナリー、ＦXのことはわからない。もやもやとしながらも、返す言葉の見つからない私は彼女の話をただぼーっときくしかアテがなかった。

　後日、彼にそれとなく為替やＦＸのことを訊ねてみた。

「俺はＦＸはやらない。あれはレバレッジもかけれて投機に感じるし、そもそも講習会やセミナーを開いてる投資家はうさんくさい。本業で儲けていたら、そんなセミナーなんてやらないだろう？本当に儲ける方法を他人に教えるわけがない。」

　おや？会話の内容によって僕や俺になる。この話は本気モードかしら。

「そっか。…ちなみに外国株はやらないの？日本株よりいいってネットに書いてたよ。」

「外国株は為替（かわせ）に左右されるし、手数料も馬鹿高いし、いろいろとメンドクサイから俺はやらないよ。やるならインデックスファンドで十分。」

「ふーん……（何言ってるかよくわからないけど）」

（ここでいう為替は為替レート、つまり円・ドル・その他外国通貨の価値の変動のこと。例えば購入した外国株が１ドル１００円の時に１万ドル分購入した場合日本円で１００万円となるが、１ドル９０円になった場合、その１万ドルは日本円で９０万円になる。リスクヘッジをかけることもできるが手数料が発生する）

「あと、特にビットコインとか仮想通貨もそうだけど、何に投資しているのかわからないものは嫌だな。株は企業と成長できる。その会社の考えに納得できなければ俺の大事な資金を渡したくない。」

「…そっか（なんかこだわりがあるのね）」

　証券会社のホームページで確認してみたが、どうやら外国株は口座もまた別に開かないといけないらしい。たしかに難儀だ。

　私は外国株を素直に諦め、その夜ネットで下調べした米国インデックスファンドからいくつかに目星をつけ眠りについた。

※バイナリーオプション・・・ハイ（上昇）かロウ（下落）かを予測し、その値動き・値幅で利益・損失が確定される。

※投機・・・ここでいう投機とは短期で利益を得る賭博的取引をさす。

※レバレッジ・・・担保となる資金をもとに何倍もの取引を行うこと。

※インデックスファンド・・・投資信託の一種。市場の平均株価指数と同じような動きをする投資法。日本では日経平均株価・ＴＯＰＩＸ。米国でいえばダウ平均やＮＡＳＤＡＱ、Ｓ＆Ｐなどに連動する。株価指数（インデックス）