十九歳で家から逃げました

澄田ゆきこ

0、『家族』ってなんだろう

 みなさんにとって家族とはどのようなものでしょうか。

 大切な存在? 守るべきもの? 一緒にいると安心できる? ちょっと煩わしい?

 答えは人それぞれだと思います。家族によっても、人によっても、同じ家族なんて何一つない。当然のことです。

 ちなみに、私にとっての家族とは『呪縛』です。



 二〇一八年一〇月二七日。「出て行くなら出て行け」「一生顔も見たくない」「勘当だぞ、いいな」そんな声に追い立てられるまま、私は自ら家を出ました。その月の初めに一九歳になったばかりでした。

 父は短気で暴力がちな人でした。父の横暴に耐え兼ね、母は中学生の時に出て行きました。

 学生寮に強引に転がり込み、一人になってからしばらく。あわただしい手続きが一通り落ち着くと、沈みがちな日が増えていきました。父が出てくる悪夢を何度も見ました。

 このままではだめだと思い、私は思案しました。私にできることはなんだろうか、と。

 カウンセリングを受けようにも、保険証を持っていない。誰か知人に話すことも考えたけれど、どうも申し訳がつかない。

 小学校からずっと小説を書いてきた私は、書くことだけは得意でした。私は筆を執ることに決めました。自分の過去を整理し、清算するために。


 これから私が綴るのは、『呪縛』から逃れるための闘い。


 どうかお付き合いいただければ幸いです。


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