59、親から逃げても呪縛は続く

 親から逃げて早数ヶ月が経ちました。生活は徐々に安定し、目の前に迫る問題は学費くらい。その中で痛感したのは、お金の大切さと、親から受けた暴言や暴力は、逃げてからも長く精神を蝕むのだということでした。

 お金がないと精神が病むというシンプルな事実を、嫌というほど突き付けられました。食うに困るほどの生活ではないけれど、学費のことを考えると粗食に走らざるを得ず、ものの数ヶ月で四キロ痩せました。(家出ダイエットですね。わーい)クリエイターを支援する奨学金に通らなかった時は、実力不足を痛感させられると同時に、先の見えなくなった不安に泣きました。つい最近ですが、二つ目の長期アルバイトも始めました。バリバリの夜勤でかなり重たいですが、かけもちでアルバイトをしている人が多い職場なので、私は甘えていたのかなあという気持ちです。

 学費免除は、警察の相談票を添付し申請しました。しかしながら、基本的には親の収入が加味される学費免除や奨学金は、どこまで当てにしていいのか、どこまで同情が買えるのかわかりません。

 ……なんて窮状を嘆いていたところ、インターネット上で大きく反響があり、様々な方が支援してくださいました。おかげさまで一年分ぐらいの学費は賄える額が揃い、あまりの影響の大きさに私自身もびっくりしています。棚からぼた餅という気分です。

 支援してくださった方、エッセイを広めてくださった方、読んで共感してくださった方、すべての方にお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。


「親から受けた暴言や暴力は、逃げてからも長く精神を蝕む」

 このことに関しては、数ヶ月経った今でも同じです。幸い、フラッシュバックやパニックに陥ることは滅多にないものの、父が出てくる悪夢を頻繁に見ます。決まって、私が父を煽り立て、激怒した父に掴みかかられたり、殴られたりする夢です。首を絞められる夢を見た時は、夢の中でも苦しさを感じるという新体験をしました。(首にイヤホンが絡みついていたのが原因かもしれません)

 こんなことを書いている今日の朝も、父が乗り込んできて殴られる夢を見ました。

 

 時折、憂鬱の中に沈んで動けなくなるときがあります。子供のころのような寂しさに苛まれて泣きたくなる時もあります。

 アダルトチルドレンと呼ばれる人は、心の中に、大人にならざるを得なかった時の年齢の自分を飼っていると言います。もし私がそれに該当するとするなら、自分の心の年齢がどこで止まっているか、即答できます。

 母が出て行った中学一年生の冬です。


 さすがにまずいな自覚するほどの心理状態になる時もあるので、頃合いを見て心療内科に行ってみようかなと思います。


 とりあえず、私は家から逃げました。「一人で生きてみろ」と言われて家を出て、一人だけの力ではないけれど、色々な人の力に支えられながら、色んな奇跡に恵まれながら、何とか生きています。

 私は生きています。

 このエッセイが、誰かの心に響いて、何かを変えられる原動力になれたらいいなと思うばかりです。

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