おわりに
60、『家族』ってなんですか?
このエッセイを書きだして最も驚いたのは、読んでくださった方からの、あまりの共感の多さでした。
実のところ、私は怒られるんじゃないかと思っていました。苦しかった、辛かったのは事実だけれど、父は確かに生活費を出していたし、私や妹を学校に通わせ、私は大学にも進学させてもらえました。
世の中にはもっと苦しんでいる被虐待児がいる。毎日食べる物にも困ったり、お風呂に何日も入れなかったり、痣が消えないほど頻繁に、強い力で何度も殴られたり、アルバイト代を全部親に取られたり、そういう人もいる。母の言葉を借りると、私は彼らよりもずっと「恵まれている」のだから、文句を言う資格はないんじゃないか。私のされてきたことは、虐待なんて呼べないんじゃないか……。そう思っていました。
それでもこのエッセイを書き始めたのは、自分の中でぐちゃぐちゃとわだかまっているものを外に出したいという、ただその一心でした。
しかしながら、多くの人がこのエッセイに、応援と共感のコメントを届けてくれました。
「私の家もこうでした」「毒父と言動がそっくりでびっくりしました」「あなたのされてきたことは立派な虐待です」「よく頑張ってきましたね」
そう言った言葉の一つ一つが、私を勇気づけ、励まし、奮い立たせてくれました。それと同時に、こんなにも、私と似た状況で苦しんでいる、あるいは苦しんできた人が多いのかと、ただただ驚かされました。
皆さんの応援や共感のコメントのおかげで、十万字を超えるこのエッセイを、こうして最後まで書き上げることができました。読んでくださった方、本当に本当にありがとうございます。
私が繰り返し訴えていきたいことは、このような機能不全家庭はおおよそ特別なものではないこと。それから、虐待や毒親から逃げたいと思った時には、誰が何と言おうとすぐに逃げるべきだということです。
特に私の場合は、渦中にいる時に警察や諸機関に頼らず、後で悔しい思いをしました。
暴言の場合はボイスレコーダーに証拠をとる、暴力の場合は少しでも受けたらすぐに警察に行く、そういったことをするだけで、だいぶ未来が変わっていたと思います。
青少年と呼ばれる中高生、あるいはそれ以下の方も、もう成人と呼ばれる年齢の方も、私と同じ十八から十九歳のひずみにいる方も。ぜひ私を反面教師にしてほしいと思います。誰かに頼ってください。逃げてください。無責任かもしれませんが、きっと誰かが助けてくれます。
世間にはDVや虐待をはじめとする家庭問題が溢れています。加えて、何度も繰り返し言うように、児童福祉の恩恵も受けられず、未成年ゆえに独立もできない、十八歳から十九歳の福祉の空白もあります。(これに関しては、「自立援助ホーム」という制度もあるそうです。親から逃げられず悩んでいる人は、ぜひ活用してみてください)
十九歳ゆえに呑み込まれた様々なしがらみ。その存在を知ってもらえるように、このエッセイには「十九歳で家から逃げました」というタイトルをつけています。
家庭問題が充満しているにも関わらず、世間では「家族は尊いもの」「親は無条件に感謝するもの」といった風潮があります。「家族で支え合いましょう」という言葉が道徳として語られます。
そのような風潮の中で、このエッセイを最後まで読んでくれたあなたに、今一度問います。
みなさんにとって家族とはどのようなものですか?
『家族』って一体、なんですか?
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