初めての家出
18、日記は感情の墓場
『十一月二十五日(金)昨日は五十四年ぶりの初雪in十一月
急に寒くなってきてコートを着始めたはいいが、今日はブレザーを忘れていた。何やってるんだろう。
トラブルは何もないけれど、不思議と沈んだ気分の一日。
この静けさは何かが起こる予兆?』
気まぐれにつけていた日記からの引用です。これより少し前から、一度の衝突が大きくなっていくことが増えていました。いつもは一晩で片付いていたものが、二三日と冷戦のように続くこともありました。だからこそ、何もない穏やかな日々に、むしろ不穏なものを感じてしまったのかもしれません。青インクの文字も心なしか不安げ。
残念ながら嫌な予感は的中することになりました。
『十二月四日(日)
なんか父親が不機嫌
うるさい
言うことがいちいち嫌味ったらしい
何あれ?
死ねばいいのに』
いつもはこの程度で終わっていた日記も、この日はそれでは終わりませんでした。
以下、赤インクの殴り書き。
『やることなすこと本当に大人げない。最低。あたまわるいのにまわりくどい言い方をするからすごくバカに聞こえる。人に期待ばかりしているくせに少しでも期待を裏切られると怒る。てか土曜そばゆでたの私だろくそったれ死ね。脅迫すればなんでも思い通りになると思っている。一方的に被害者ぶってこっちの努力をすべてないがしろにする。そっせんして子供の将来をつぶそうとする。それに快感を得ているように見える。気持ち悪い。いつえもかわいそうなのは自分なんておめでたい頭してる。あるいみポジティブ。どうやったらあんな厚顔に生きれるんだろう。吐き気がする。いつもそうだあの人。自分のペースで何もかも進まないと子供みたいにぐずる。私のことをお姫さまだとか散々言うけれど、いつも王様みたいにふんぞり返っているお山の大将はあいつだ。子供じゃ何もできないような大人のずるい武器ばかりふりかざしている。最低。さいあく。人間のクズ。ゴミ。なんで今までいけしゃあしゃあと生きてこれたのか。何人のひとがあいつの犠牲になったのか。だけどあいつはいつだって被害者だ。いつもそう。死ねばいい。死ねばいい。死ねばいい。いっそ楽になりたい』
一ページをびっしりと埋め尽くす文字は、感情のままに吐露しているせいでぐちゃぐちゃに乱れていました。やたらとひらがなが多いのも、思いつくままに書き殴っていたせいかと思われます。
鬱屈が一気に爆発した形で、今までの比ではない怒りが私の心を埋め尽くしていました。
この日に何があったのか?
この日から何が起こったのか?
ある意味人生のターニングポイントとなった事件について、これから語ろうと思います。詳細は次のお話から。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます