第27話:問題解決に向けて

「その、あたいは、剣が好きで、体術を習うよりも、剣術を習いたいんです」


 まさかの暴露に思わず絶句してしまった。

 えっと、あれ? 弟子になりたいということは、強くなりたいということではないのか?


「剣術よりも、シェイラには体術に適正がある。それも、明確な違いがな。そこを伸ばせば実力も跳ね上が――」

「嫌です! あたいは剣が大好きなんです! どうか、どうか剣術を教えてください!」


 ……お主、バカなのか? バカなんだな?

 それに、今の発言だとが好きとかではなく、が好きと言ったのか?


「……却下」

「嫌だー! あたいは剣を愛しているんですよ! そんなあたいから剣を奪うんですか? グレン様は悪魔ですか? 魔王ですか!」


 あながち間違っていないがな! 今はそういう話ではないのだよ!


「シェイラ、お前は強くなりたくてここに来たんだろ?」

「剣で強くなる為に来ました!」

「……ギャレスはなんて言ってたんだ?」

「まあ、なんとかするんじゃないの? と言っていました!」


 あの野郎! こっちに丸投げしよったな!


「グレン様、やはりここは私がビシバシと鍛えさせていただきたいと思います。この小娘にグレン様の素晴らしさを体に教え込まなければ――」

「待て待て待て待て! 話がややこしくなるから止めろ!」


 ここまでの話し合いを聞いて、なぜその発想になるのじゃ!

 シェイラもシェイラじゃが、サラもサラじゃな、頭が痛くなりそうじゃよ。


「……えっと、え?」

「……すまん、アヤ。もう少しだけ待ってくれるか?」

「あ、はい、了解っす」


 アヤだけ取り残されているではないか。

 今ここでまともな奴は我とアヤだけということかのう。


「……一回、話をまとめるぞ。シェイラには体術に大きな適正があり、そこを伸ばせば確実に強くなれる。だが、剣を使った戦い方をどうしても習いたい、それで間違いないか?」

「当然です! 剣を捨てるなんて考えられません!」

「そしてサラだが、俺が女性の弟子を取ることに忌避感を持っていて、体術にしろ剣術にしろ、シェイラが俺の弟子になることが気に食わないと。そして、サラ以外が師匠になるなら別の誰かを師匠にさせろと、そういうことだよな?」

「当然でございます。私は体術もですが、剣術も身につけております。誰が好き好んでグレン様に女の弟子をつけさせるものですか!」


 ……なんて面倒臭いのだ。

 一番簡単なのは全てをサラに任せることで、サラもそれに不満を持つことはないだろう。

 だが、それは我が気に食わん。育てるならば専門職にやらせるべきなのじゃ。そうでなければ我の満足いく指導とはならんからな。

 我が師匠になれればいいのだが……安心せい、ならんから。だからその殺気を抑えんかい!


「……仕方ない、奴を呼んでみるか」


 我の言葉にシェイラは当然だが、サラも首を傾げてしまった。

 サラにはアヤを任せるとして、やはりシェイラには専門職の師匠を当てた方が良さそうだ。

 我があてにできる奴といえば魔族しかおらんし、サラ――ドレイウルゴス以外の魔族はが現魔王に従っておる。

 だが、は未だに従うかどうかを決めかねておるのじゃ。

 その中に一人だけ、我の頼みなら断らない奴がいる。奴ならシェイラの師匠にはうってつけであろうな。


「サラ、少し出てくるから待っていてくれ」

「……どちらに行かれるのですか? 私には教えていただきたいと思います」

「シェイラの師匠になれる者に会いに行く」

「ですから、どなたでしょうか?」


 ……この言葉だけでは納得しないか。


「すまん、二人も少し待っていてくれ」


 ポカンとしたまま頷いてくれた二人を残して、我はサラを連れて家を出た。


「それで、誰を連れてくるおつもりなのですか?」

「殺気を抑えろ、殺気を! お前は俺を殺したいのか!」

「……そのようなことは断じてあり得ません」


 ふぅ、昔はこうではなかったのだがなぁ。

 とりあえず落ち着いてくれたサラに、我の考えを説明することにした。


「一人だけあてがあるからな、そいつに話をつけてくる」

「私では役不足だと?」

「俺のポリシーだよ。育てるなら徹底的に、専門職に任せるべきだと考えている。俺なら全てを完璧にこなせるが、それを良しとはしないのだろう?」

「当然です!」

「……そこまではっきり言うか。まあ、そう言うことだから話をつけに行くんだよ。剣士でもあり、体術も使いこなす、自由奔放な魔族にな」


 我の言葉を受けて、サラにも思い当たる節があったのか――渋い顔をした。


「あの方、私はあまり好きではありません」

「そうだろうな。だが、奴ならサラの希望にも応えられるし、シェイラの師匠にはうってつけだろう?」

「……それは、そうですが」


 何故にそこまで彼奴のことを嫌っているのか我には分からんが、シェイラの師匠としては納得してくれたようじゃのう。


「それじゃあ、少し行ってくる。サラはシェイラに説明と、アヤに指導方針を説明しておいてくれ。……特にアヤは、完全に置いていかれていたからな」

「かしこまりました。お戻りをお待ちしておりますね」


 なんとか納得してくれたようじゃのう。

 我は転移魔法を発動すると、奴がいるはずの場所に転移した。

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