何処にかけてんだろうな
何処にかけてんだろうな、と思いながら、ほとりはスマホを耳に当てている繭を眺めていた。
警察はその相手を知りたいらしいが、繭は何処にかけたのか、見せないようにしていた。
しばらくして電話に出た相手に、繭は小声で言う。
「すみません。
ちょっと困ったことが起きまして……。
あの品に関してなんですけど」
相手がなにか言っているらしいのを繭は、うんうんと頷きながら聞いている。
「いえ、法的には問題はないんですけど」
「あるわけないじゃないですか」
と伊佐木が合いの手を入れるのを無視して、繭は言った。
「ええ、大丈夫です。
ただ証言して欲しいだけなんです。
あの品を取り寄せていたのは自分だと。
いえいえ、名前はオープンにはしませんから」
伊佐木たちが、ええっ? なに勝手に言ってんのっ、という顔で繭を見る。
だが、繭は神妙な顔で、
「かわってください。
証言されるそうです」
と言って、近くに居る沼田ではなく、伊佐木にスマホを渡した。
チラと通話中の画面が見えたが、
『お得意様 A』
としか表示されていなかった。
お得意様 A……。
Bが居るのだろうか、と思っているほとりの前で、伊佐木は黙って、お得意様Aの話を聞いていたが、
「それで、貴方はあれをどうしてるんですか。
あの大量の……」
ブツッと通話は打ち切られたようだった。
「駄目じゃないですか、お客様にプライベートなこと突っ込んで訊いちゃ」
仕事なくなったら、どうしてくれるんです、と繭が迷惑そうに言っている。
だが、嫌がられることを訊くのが警察の仕事。
伊佐木は気にするでもなく、繭にも突っ込んで訊いていた。
「『お得意様 A』って誰です?」
やはり、スマホの画面を確認していたようだ。
だが、繭には、
「企業秘密です」
とはぐらかされていた。
「あの人形と僕が事件に関係あると判断されたら、話さざるを得ないかもしれませんが。
おそらく、ただの誤配達でしょ。
そこまで協力する義理はないです」
聞いているほとりの頭の中で、『誤配達』が『ご配達』になり、山本家の玄関で、坂本が制帽を脱いで、ぺこぺこ頭を下げながら、荷物を渡していた。
『お
思わず、笑ってしまい、
「……どうした」
と環に言われてしまったが。
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