それでいいのか、警察
すごいですっ、と手を叩いて、ほとりを褒め称える伊佐木を見ながら、環が、
「いや……それでいいのか、警察」
と呟いている。
「ともかく、山本爾さんの霊を早急に捕まえるべきですよねっ」
と言う伊佐木に後ろから、沼田が、
「山本爾の過去を洗い直すんだろうがっ。
毒されるなっ」
と言っていた。
あとは警察の仕事だと、ほとりたちは寺に引き上げた。
すると、縁側で、桧室が何処かで見た老人と向かい合い、語らっているではないか。
いや、正確には、延々と老人の話を聞いていたらしい桧室が凍りついた笑顔のまま固まっているのだが。
山本爾は桧室に語っている。
「だから、言ってやったんだよ。
お前たちに見せるものなどないっ! ってな。
そうやって疑心暗鬼になってる連中になにを言っても無駄だからな。
そしたら、カッとなったその若いのが、わしを突き飛ばしたんじゃ」
「はあ……」
と桧室が機械仕掛けのように頷いている。
その様子を見ながら、ほとりは呆然と呟いた。
「……環。
事件が解決してる」
「そのようだな」
自分たちが山本邸で、推理を繰り広げている間、此処で、山本は桧室に事件の真相を語っていたようだ。
「……桧室さんにスマホ持たせておけばよかったね」
「発信できないだろう」
「神様、通話をつなぐことはできないけど、メール打てたじゃん」
と呟くと、いつの間にか横に居た神様が、
「返信だけならできるぞ」
と言ってくる。
抜け殻のようになった桧室の、山本の話とまったくタイミングが合っていない、
「はあ……」
という相槌をまた聞いたとき、ほとりのスマホが鳴った。
和亮からだ。
え、なに? と思って、チラと環を見上げると、出ろよ、と威嚇するような顔で環が見てくる。
怖いよ、と思いながらも、電話に出ると、和亮が、
『ほとりか。
今、仕事中なんで、手短に言うが。
なんだかわからないが、田村先生が環に話があるらしいぞ』
と言ってくる。
「田村先生が……?」
環はかつて、田村の秘書をしていたのだが、裏金を持って逃走していた。
というか、逃走中だ。
「環の親やお前の親を通したんじゃまずいらしくて、秘書の
環に連絡するように言え。
……なんだかわからないが、ヤマモトの話だと言えと言っていたぞ』
……山本。
『もしかして、あれか?
例の民家の事件の。
田村先生となんの関係あるのか知らないが、ともかく俺は伝えたからな』
と言って、電話は切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます