気になる話
は、長谷川環が来たっ。
ほとりが近くのコンビニで買って差し入れたくれたお菓子とお茶を庭先で食べていた伊佐木は、山本家の前で止まった軽トラの音に一気に緊張する。
『今から行くから待ってろ』
と環から連絡が来たので沼田と一緒に待つことにしたのだ。
いや、なんで、待っていなきゃいけないのかは、よくわからなかったのだが。
未来の代議士様の迫力に負け、おとなしく伊佐木たちは環の到着を待っていた。
「ごめんなさい、環」
とほとりが言うと、墨染めの衣のまま現れた環が、いや、と言う。
絵になるカップルだ。
美しい、と伊佐木は改めて、二人の様子を眺めていたのだが、環の後ろから、あの女子高生が現れた。
一緒に車に乗ってきたようだ。
二人の話によると、どうも、長谷川環がわざわざ彼女を車で送ってきたようなのだ。
待てよ。
車に乗ってくるってことは、やっぱり生きてる女の子なんじゃ、と伊佐木は淡い期待を抱いたが。
ほとりが、
「ミワ、あんたのせいで殺されたって、山本さん言ってたんだけど」
とその子の方を向いて話し出すと、沼田が面妖な顔をしたので、沼田には、ミワが見えていないのだと気がついた。
「知らないってば。
どういう意味なのか、その山本とやらを捕まえて訊きなさいよ」
と言うミワは年上のはずのほとりに相変わらず、偉そげだ。
「いや、だって、山本さん、
『あの人形のせいだっ。
おのれっ』
とか叫んで居なくなっちゃったんだってば。
ミワを呪ってたんだから、ミワのところに行ったんじゃないの?」
「来てないけど。
っていうか、人形のせいだって言ったの?」
「そう。
此処にあったっていう人形のことかしらね?」
とほとりが今はなにもない座敷の方を見ながら言うと、
「繭のところのが誤配達された奴でしょ。
じゃあ、私、関係ないわよ。
あれ頼んでるの、私じゃないもの」
とミワは言う。
そして、ミワはチラと伊佐木の方を見た。
話が聞こえているのがわかっているのだろう。
ミワは少し声のトーンを落として、ほとりに言ったようだった。
「……あのミワには、私の魂は入ってないから」
なんだか気になる話だな、と思いながら、伊佐木はそちらを窺っていた。
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