……やってみるか
一方、ほとりたちのところでも、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
仕事中、外回りをしていた山本の息子が見知らぬ男に殴られたというのだ。
山本家でその連絡を受けた沼田は、
「あの人形は何処に行ったと言われたようだ」
と言う。
「人形?」
とほとりたちは訊き返す。
「人形というと……
ミワちゃん人形?」
と呟いたほとりに、ミワが、
「なんでよ」
と言う。
いや、正式名称はミワちゃん人形ではないはずだが。
「山本さんちにあった人形、今、何処にあるんです?」
とほとりが訊くと、
「まだ警察です。
被害者の家族の許には返ってません」
と伊佐木が言ってくる。
「でもあれ、繭のでしょ?
返すのなら、繭のところじゃないの?」
と言うミワに、伊佐木が、
「ああ、そうでしたね」
と返事をするのを見ながら、ほとりは、
……伊佐木さん、すごくナチュラルにミワと話している自分に気づいているのだろうかな、と思っていた。
沼田が言うように、此処では霊が見えてない人の方が少ないので、この状態で普通だと思うようになったようだ。
「でも待って」
とほとりは言った。
「山本さんは、あの人形のせいで殺されたと言ってたわ。
そして、今、また、あの人形は何処だと言われて、山本さんの息子さんが殴られている。
人形を繭の許に返したら、繭が殺されるか、殴られるかするんじゃないの?」
「ええーっ。
じゃあ、戻さないでっ」
と言うミワに、伊佐木が、
「ええーっ。
でも、いつまでも警察にあるのも嫌ですよっ。
保管庫からトコトコ歩いてきたらどうするんですかっ。
あれ、ほとりさんのお寺の呪いの人形と同じ人形なんでしょ?」
と訴えていた。
いや、私の寺じゃなくて、環の寺なんだが……。
「なんだかわからんが、あの人形にはなにかある」
とようやくそこで沼田が口を挟んできた。
「……バラバラにしてみるか」
凄みのある刑事の顔で言う沼田に、ほとりの後ろでミワが、
「やめてーっ。
私、関係ないんだけど。
なんか、やめてーっ」
と叫んでいた。
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