危うく、殺りそうになりました……
ひー。
なんで、納屋見て、蔵見るんですかー。
ほとりは揉み手をして、不気味な笑顔を浮かべたまま、沼田の様子を窺っていた。
沼田はなんだかわからないが、難しい顔をして、寺や納屋の中を見回している。
その視線が樽を見て、また、冷蔵庫を向いたので、危うく、納屋の壁に立てかけてあった火かき棒で沼田を撲殺しそうになった。
「ま、まあ、沼田さん、中でみかんでも」
これ以上、冷蔵庫の中のものを追求されたくない、と思ったほとりは早口にそう言う。
「先程いただきました」
と言った沼田は、何故か漬け物樽に向かい、歩き出す。
それは別にオッケーですよ、と思いながら、とことこ後ろをついて行こうとすると、いきなり、繭が台所から飛び出してきた。
「刑事さんっ、みかんはいかがですかっ」
「……先程いただきました」
明らかに挙動不審な繭に不審の目を向け、沼田は言う。
どうした、繭、と思いながら、ほとりが横に立った繭を見上げたとき、母屋の方から絹を裂くような(?)男の悲鳴が上がった。
沼田も繭も母屋を振り返ったので、霊現象ではないようだ。
環の声ではない。
伊佐木だろうか。
沼田もそう思ったようだった。
沼田は何故か、
「伊佐木が漬け物樽にっ!?」
という謎の言葉を残し、母屋に向かい、走り去る。
漬け物樽に、なんなんですか……と思いながら、ほとりたちも後を追った。
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