第10話 クラリスの平日
布団というのは良いものだ。暖かく、ぬくぬくしていて気持ちがいい。この中に一生篭っていたい気分になる。
そんな気分に浸っていると、何かが私を揺さぶってきた。
「おーいクラリス。朝だよ。起きて」
この至福の時間を破壊しに来る極悪人ことロッゾだ。私は普段のロッゾが好きではあるが、私を起こしに来る時のロッゾは嫌いだ。布団を力ずくで引っペがしにきたり、私の下着を人質(?)にして脅してきたりと容赦が無い。
私がタヌキ寝入りをし続けると、ロッゾは少し力を強めに揺さぶってくる。
「ほう、反応が無いのか。ならしょうがないな。クラリスの服の腰回りのサイズを片っ端から読み上げて行こうかなぁ……」
そうロッゾが言った途端無条件反射で手が動き、ロッゾの手首を割と強く握る。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼︎ ごめんなさいクラリスさん冗談です許してくださいホントに手が潰されちゃううううううう⁉︎」
必死になって謝ってきたので仕方なく手の力を緩めてあげる。私に対して体重の話は御法度だ。それを知っててなお体重の事に触れくるロッゾが悪い。
「いや、クラリスさんや。元はと言えば起きないクラリスさんが悪いと思うんd──いだだだだ‼︎ 痛いよ痛いってクラリスさん‼︎ 頼むから早い所起きちゃってよ!! 僕の体が持たないぃぃぃぃぃ!?」
ロッゾが限りなく奇声に近い悲鳴を上げながら私の布団の周りをバタバタと暴れ回る。
こんなに騒いだら流石に目が覚めるわよ……。
私は渋々布団から這い出てロッゾに挨拶をする。
「……おはようロッゾ。今日も騒がしい朝だね……」
「おはようクラリス。あと、いつも騒がしいのは多分クラリスのせいだと思うよ。僕は完全に被害者側だからね。何を言おうと早く起きないクラリスが悪い……はずだよ」
「少しどもったって事は自分にも心当たりがあるのね……」
「ま、まあ腰回りのサイズに触れたのはいけなかったなぁって……反省してますごめんなさい」
「よろしい。そろそろ朝ごはんにしましょうか」
「そうだね、そうしようか」
ロッゾと一緒にリビングに向かうと、既にテーブルにはポテトサラダを初めとした料理が並んでいた。
「それじゃあいただきます」
「いただきます」
手を合わせて食事を取り始める。
数分すると私もロッゾも食べ終わり、歯磨きやら化粧やらをして家を出る。
家から職場まででは15分で着く距離で、一番早いワイバーンを使えば7分で着く。ただ、割と体力と魔力を持ってかれるので普段は普通のワイバーンを使う。化粧も崩れちゃうしね。
職場に到着すると私は更衣室に向かい、魔王にふさわしい格好に着替える。やたらと重い装飾をジャラジャラ着け装飾の重みに耐えながら魔王の間へと向かうと、私の机の上には大量の書類が山積みにされていた。
「はぁ……。今日中にこれ全部やるのか……」
アンニュイな気分になりながら、山積みになった書類一枚一枚に目を通してハンコを押していく。今日のお昼ご飯は何かなぁ〜……なんて事を考えながら仕事を進めていると、ドアがノックされる。
「失礼します魔王様。ある程度書類が纏まったのでお持ちしました。こちらの方にもハンコをお願いします」
そう言われて差し出されたのは書類の山。これ全部に目を通してハンコを押さなければならないと思うと、モチベーションが下がるし気も遠くなる。
「ハァ……分かったわ。ご苦労さま」
私が白目を向きながら返事をすると部下は魔王の間から出ていった。
今日もお昼ご飯は抜きになりそうね……。ホントこのブラック企業いつ潰れるのかしら……。
そんなくだらない事を考えながらも仕事を順調に進めていく。このペースだったら少しぐらいお昼ご飯食べれそうかも。そう思えると仕事のモチベーションも少しは上がるものだ。
ひたすらハンコを押し続ける仕事を繰り返しはや3時間、仕事もようやく一段落つき昼休憩に入る。
「さーて、今日のお昼ご飯は何かなぁ?」
弁当箱をウキウキしながら開けると、中にはウィンナーや卵焼きと言ったメジャーなおかずが入っていた。いつもならもう少しシャレた物が入っているので少し新鮮味を感じる。ロッゾと出会って少ししか経ってない時のお弁当はいつもこんな感じだったなぁ……。
少し思い出に浸りながらお昼ご飯を食べ終わると、最初の半分ぐらいになった残りの仕事に取り掛かり始める。
「今日ぐらいは定時に帰りたいなぁ……」
そんな私の声が、誰も居ない魔王の間に虚しく響いた。
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