第4話 嫁さんの休日 その2
クラリスとハンバーグを食べに行き、その後は時間を潰せる映画館へと向う事になった。
特に見たい映画は決めていなかったので、何を見るかは映画館で決める。
映画館に到着すると、色々な映画のポスターが貼ってあった。上映時間が近い作品を調べ、その中で良さそうな映画を探す。
「あ、これとか良いんじゃない?『死音』だって。面白そうじゃん」
「クラリスさんや。これホラー映画ですよ? 夜に1人でトイレに行けなくなってもいいの? 主に僕が」
「問題無いわね。起こされるのは嫌だけど、服選びの仕返しに比べたらなんて事無いわ。土下座して謝ったら一緒にトイレ行ってあげるから安心しなさい」
「アレ根に持ってたのね。僕びっくり。仕方が無いから反省の意を込めてこれ見ようか。夜のトイレ付き添ってね」
「土下座して謝ったらね。早速チケット取り行って来るわ」
「じゃあ僕はポッポコーンとジュース買ってくるね。ポッポコーンはキャラメルでいい?」
「んーそうね。キャラメルでお願い。ジュースはリンゴジュースで」
「了解。じゃあここで待ち合わせね」
クラリスと別れ僕は売店に行く。そこでクラリスの要望通りジュースとポッポコーンを購入し、待ち合わせの場所に戻る。因みに僕もキャラメルとリンゴジュースの組み合わせだ。クラリスもチケットを取ってきた様で、トイレに行ってから劇場内に入る。
「僕ホラー苦手なんだよね。急に出てくる系がホントにダメで……。クラリスはそういうの大丈夫なの?」
「私は魔王よ? 大丈夫に決まってるじゃないの。こんな紛い物よりも怖い悪魔を日常でたくさん見てるのよ? 怖くなったら私の胸に飛び込んで来なさい」
「クラリスは頼もしいなぁ……。あ、そろそろ始まるみたい」
「どんなものか見定めてやろうじゃないの。フッフッフッ……」
クラリスが余裕あり気に笑うと、劇場内の照明が落とされスクリーンに映画が映り出す。
映画の内容は、主人公の周りの人々が次々と死んでいくと言うものだった。遂には主人公にも危険が迫り、今は主人公がベッドで寝ているシーンだった。
ベッドのしたから手が伸びていき、主人公の体に触れる。主人公が不思議に思い、目を開けるとそこには──
「うわぁっ、ビックリした! ……なんだクラリスか。驚かさないでよ」
いきなりクラリスが僕の手を掴んだのだ。そりゃビビるよ。
幸い劇場内にはあまり人が居なかったが、かなり迷惑な事をしてしまった気がする。
「……どうしたの?」
クラリスの手はカタカタ震えている。もしや……。
「……ねぇクラリス。ひょっとして怖いの?」
クラリスが首を縦にブンブン振る。
映画を見る前の威勢は一体何だったのか。でもかわいいから良しとする。
この後クラリスは映画が終わるまで僕の手をずっと握っていた。終盤の主人公が捕まるシーンは本当に怖くて、僕も思わずちびるかと思ったが何とか持ち堪えた……と思う。後でパンツが湿ってないか確認しよ。
映画が終わった後、照明が付くとクラリスは涙目になっていた。僕は思いの他ダメージを受けずに済んだので、今夜のトイレは大丈夫そうだった。
クラリスと僕にとって、久しぶりに楽しい休日になったと思う。
家に帰り、色んな事を済ませて夜になった。
時刻は11時30ぐらいで、早めに就寝しようと思い布団へ潜る。クラリスも1人で寝るのが怖いのか、一緒に早めの就寝となった。
「電気消すからね?」
クラリスがコクンと頷いたので電気の明かりを小さくし布団へと潜る。
3分ぐらいたった頃だろうか。僕の布団に何かがモゾモゾと入ってくる。
横を見るとクラリスが潤んだ目で僕を見てきた。
「怖いから一緒の布団で寝たい……」
ウチの嫁さんかわい過ぎかよ。萌えすぎて死にそうだわ。映画よりこっちの方が心臓に悪いよ。
「クラリスが意地張ってあんな映画見るからだよ。ほら、おいで」
「だって大丈夫だと思ったんだもん……」
クラリスが僕に抱きつく形で布団の中に収まる。かわいい。
更に数分すると、クラリスがとんでもない事を言った。
「……ロッゾ。オシッコ行きたい……」
「行ってらっしゃい。僕はゆっくり寝てるよ」
「ロッゾの意地悪! 怖くて1人じゃ行けないの! お願いだから付き添って!」
「しょうがないなぁ……。年齢教えてくれたら付き添ってあげるよ」
「え……。そ、そんな……。年齢教えたらロッゾに嫌われちゃう……。で、でも教えなきゃトイレ行けない……。どうしよう……」
クラリスが1人で葛藤を始める。何度もしつこいがかわいい。これが魔王だよ。3年前ぐらいの僕なら信じられないね。ウチの嫁さんは最高かよ。
「ウソだよクラリス。ホント可愛い反応するね。ほら、一緒にトイレ行こ?」
「え、いいの……? ありがとう」
クラリスと一緒にトイレに向かう。先にクラリスが入り、その後僕もついでにしちゃう。
「ねぇロッゾ、ちゃんと居る……?」
「ちゃんと居るから安心して出しなよ」
「音聞こえるの恥しいから耳塞いでて……」
「了解」
そう言って僕はトイレのドアに耳を当てる。
「トイレのドアで耳塞いでるけど問題無いよね?」
「は、恥ずかしくて死ぬからやめてぇ!」
この後、トイレを出たクラリスにポカポカ殴られたのは言うまでも無いだろう。
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