第3話 嫁さんの休日

朝食を食べ終わった僕とクラリスはリビングでのんびりしていた。何故かと言われれば理由は無い。強いていえば特にする事が無いからだ。


「ねぇロッゾ。暇」

「奇遇だねクラリス。僕も暇」

「平日はやたらと忙しくて休みが欲しいクセに、こうして休みになると特にする事無いのよねぇ」

「あの現象ってなんて言うんだろうね。社会人のジレンマ? 僕も前まではそうだったなぁ。クラリスが頻繁に来るようになってからは休日楽しみだったけど」

「色んな所に遊び行ったわね。最近は何処にも行ってないけど」

「そうだねぇ……どっか行く?」

「いいわね。でもどこ行く?私特に行きたい所無いんだけど」

「食料はまだ買わなくても問題無いし、洗剤とかも切れてないんだよなぁ……服とか買いに行く?クラリス最近買ってないでしょ?ウエストきつくなってるんじゃ──」

「ん?今何か言おうとした?」


最近肉が付いてきたウエストの事に触れようとしたら、クラリスが異様な殺気を放った。


「いっけね! 畑に水をやるのを忘れてたなぁ! すぐに水撒いてこなきゃなぁ! ハハ、ハハハハハハ」


乾いた笑いを飛ばしながら畑に逃げる。さすが悪魔を統べる者。魔王恐るべし。

畑に水をやって戻ってくると、クラリスが着替えを済ませていた。


「あれ、もう着替えたの?」

「だって出掛けるんでしょ?ロッゾも早く着替えてきちゃいなさいよ」

「了解」


クラリスに急かされたので、テキトーな服を選んでそれを着る。


「お待たせ。お金持った?」

「一応持ったわよ。そんなに使わないでしょ?」

「クラリス次第だね。服買ってご飯食べて、後はテキトーに時間潰せばいいでしょ」

「そうね。それじゃあ行きましょ」

「その前に角と尻尾収納してね。正体バレたら色々と終わるよ?」

「あっ、忘れてた」

「ホントウチの嫁さんは馬鹿だなぁ。そんな所も可愛いんだけど」

「へっ!? ……は、早く行きましょ! 楽しみだなぁ!」


恐らく照れ隠しなんだろう。無駄にテンパってる。やっぱり可愛いな。

苦笑いしながら玄関に向かい、家の鍵を閉める。ここから目的地まではそんなに距離はない。

僕はクラリスと手を繋ぎ、目的地へ向かうのであった。




10分程歩くと目的地の服屋に着いた。


「久しぶりに来たわね。夏の新作とか出てるじゃない」

「まだ春だって言うのに気が早いねぇ。どこの服屋もこんなモンなの?」

「こんなモンよ。さて、私の愛する旦那さんにどの服がいいか選んで貰おうかしら」

「クラリスは基本的にどの服でも似合うけどね。夏物だし、露出多くてエロいの選ぼっかな」

「ロッゾって意外とそういう事考えるのね。昨日は絞り尽くされてヒイヒイ言ってたのに」

「クラリスが手加減してくれないからだよ。別にクラリスとするのが嫌なわけじゃないからね? こんな肢体見せつけられてそういう事考えないってのは難しいよ」

「そ、そうなの? あと、公共の場でそういう事を言われると凄く恥しいんだけど……」

「クラリス……」

「な、なによ……?」

「可愛い。愛してるよ」


ボンッ!と音が出そうな程クラリスの顔が一気に赤くなり、もごもごと何かを言い始める。ホントかわいいなぁ……。

とりあえず何似合うか探そう。

そう思い色んな服を見てるとタンクトップを発見した。

これとか絶対似合うよなぁ。

頭の中でクラリスがこの服を着ている姿を想像する。……ベストマッチ!

タンクトップをクラリスの所へ持っていく。


「これとか好きかも」

「へぇ、タンクトップか。なかなか良いかも」

「でしょ?早速試着してみてよ」

「分かったわ」


そう言ってクラリスが試着室に入っていく。そして数秒後、クラリスが試着室から出てきた。


「……ねぇロッゾ。これ、サイズがやたらと小さいんだけど」

「……わざとです」


クラリスが再び顔を赤くして僕をポカポカ殴る。可愛い。めちゃくちゃかわいい。

さっきよりサイズの大きいタンクトップを取りに行き、再びクラリスに渡す。

試着室でクラリスが着替え、ドアを開ける。


「どうかな……?」

「かわいい、エロい、愛らしいの3連コンボ。文句無しに似合ってるよ」

「ロ、ロッゾ。さっきも言ったけど恥ずかしいから止めて……」


クラリスがまた赤面する。


「ごちそうさまでした。僕もうお腹いっぱいです」

「ど、どういう事……?」


クラリスが困惑しているのを他所に他の服を見る。やはり夏と言えばホットパンツやミニスカートだろう。クラリスは普段丈が短めの物は履かないので、どんな姿になるか非常に楽しみだ。

そんな訳でクラリスにホットパンツとミニスカートを渡す。

クラリスが試着室に入る。

しばらくすると着替え終わり、ホットパンツ姿のクラリスが出てきた。

その姿はまさに美の暴力。エロいと言う言葉で表すのが不敬だと思えるほどエロく、とても魅力的だ。結局エロいって言ってるけど。ホント色んな男が引っ掛かりそうで怖い。


「クラリスさん、やべぇよやべぇよ。殺人級だよ。頼むから家の外では着ないでくれ。マジで頼む」

「そ、そんなに……?」

「そんなに」

「わ、分かったわ……」


僕が至って真剣な顔で頼むとクラリスが引き気味に了承する。

いくら魔王と言えどウチの可愛い嫁さんだ。変な目には合われたくないし、変な輩にも絡まれて欲しくない。他の男にホイホイついて行く事はさすがに無いと思うが、僕よりカッコイイ男性なんて世の中にはゴロゴロいる。やはり心配だ。


その後他にも色々な服を選び、クラリスが会計を済ましにレジへ向かう。どの服もウエストのサイズが以前より緩くなっているのを見たが、それについては敢えてノータッチにしておいた。帰ったら質問責めしてじっくり楽しむ予定だ。十中八九僕が怒られて終わるだろうが。


「さて、時間もいいしご飯食べに行こうか」

「そうね。どこのお店行く?」

「僕は特に要望無いかな。クラリスは?」

「私は……そうね……。ハンバーグがいいかな」

「じゃあハンバーグにしよっか」

「うん」


という流れになったので、クラリスとハンバーグを食べに店へと向かった。

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