第15話 社畜代表の平日

今の時刻は午前6時。そろそろロッゾが起こしに来る時間だ。

最近は自然とこの時間に目が覚めるようになっては来たが、毎朝布団が私を離してくれないので困る。昨日はロッゾとイチャコラして英気を養ったので布団から出れると思ったがそんな事は無く、いつも通り謎の引力に吸い寄せられ今も布団にくるまっている。

そんなこんなで、今日もいつも通りの朝がやってきた。


「クラリスー。朝だよ、起きてー?」


そう言いながら、ロッゾが私の体を布団越しに軽く揺さぶってくる。


「おーい、クラリスー? もう朝だから起きてよー?」


更に強く私を揺さぶるロッゾ。

が、まだ布団が私を離してくれない。


「うーん……お腹触ったら怒られるしどうしようかな……あっ、そうだ……」


何か思い付いたようにロッゾが声を上げる。一体何をするつもりなんだろう?

私が不思議に思ってると、ロッゾがとんでもない事を言ってくる。


「クラリスー? 早く布団から出てこないと今日のおつまみは抜きになるけど大丈──」


ロッゾがそう言うや否や、私は脊髄反射の勢いで布団から飛び出る。

私の中での優先順位は

布団<<<<仕事終わりのお酒<<<<<<<<<<<ロッゾ

なのだ。

ロッゾの次に大事なお酒は、ロッゾの作る美味しいおつまみがあっての順位なのだ。それをおつまみ無しで楽しむなど不可能。

かくして私は布団の呪縛から解放されたのだ。


「うぉっ!? す、凄い勢いだねクラリス……」

「おつまみの為とあらば仕方のない事なのよ……」

「よ、よくわかんないけどとりあえずおはよう……?」

「おはよ。さて、いつまでもこんな事してないでご飯にしましょ? 遅刻しちゃうわ」

「なんかいつもとキャラ違くない? 僕ちょっと不安になってきたんだけど……」

「ぐーたらしてるだけが私じゃないのよ」


そうキメ顔で答えると、ロッゾは何か腑に落ちないといったような顔でリビングに向かう。

リビングに着くと、今日の朝ごはんがテーブルに乗っていた。今日の朝ごはんは少し小ぶりなサンマの塩焼きとサラダ。そしてわかめご飯と味噌汁だ。


「わかめご飯なんて珍しいわね」

「たまにはいいかなーってね。お弁当もわかめご飯にしておいたよ。それじゃあ食べよっか」

「そうね、いただきます」

「いただきます」


まずはわかめご飯を少しだけ摘む。


「ん、これ美味しいわね。程よいしょっぱさとわかめの食感がいい感じになってて好きよ」

「それはよかった。……うん、確かに美味しいね。これからも定期的に作ろうかな」

「そうね、月一ぐらいでわかめご飯の日があってもいいわね。……さて、次はサンマを食べようかしら」


そう言って私はサンマの身を橋で小さく切り分けそのまま口へ運ぶ。


「ん、これ美味しいわね。脂も結構のってるし、これそこそこ高いやつじゃないの?」

「まぁちょっとだけね。たまには贅沢もいいでしょ?」

「そうね。さ、早く食べて仕事に行く準備しなきゃ」


数分掛けて朝ごはんを食べ終わり、その後歯を磨く。いつも着ている服を着て、少しお化粧をしてから家を出る。


「今日もなるべく早く帰るようにするけど、早く帰れるっていう保証はないわ」

「りょーかい。無理はしないでね?」

「大丈夫よ。じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい」


ロッゾに挨拶をしてワイバーンを召喚する。


「今日もよろしくね」


そう言いながらワイバーンの頭を優しく撫でであげる。ワイバーンは嬉しそうな声を上げながら翼をバタバタはためかせる。


「落ち着いて落ち着いて。……そうね、土日は皆の体でも洗ってあげようかしら」


休日の過ごし方に思いを馳せながら、落ち着いたワイバーンの背中にまたがり出勤準備をする。


「さぁ、行きましょうか」


私の掛け声と共に、ワイバーンが力強く羽ばたいた。

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