第37話 結婚記念日その13

スタッフさんに呼ばれて、僕とクラリスはビクビクしながらお化け屋敷の中に入って行く。

以前は旅館の様な造りだったがそれとは打って変わっており、廃病院をモチーフにした感じにリニューアルされていた。


「ほらクラリス、ちゃんと前向いて歩かないと危ないよ? 僕も思ってた以上に怖くて注意力が散漫しちゃいそうだし」

「えぇっ⁉ ロッゾが行こうって言ってきたんだよ⁉ ロッゾも怖がっちゃったら私頼る人いなくなっちゃうじゃん⁉」

「二人仲良くビクビクしながら行くしかないみたいだね」


そんな事を話しながら歩いていると、僕の気のせいかもしれないがチラッと人影が視界の端に映った気がした。


「……ねぇロッゾ、今私なにか見えちゃった気がするんだけど……」

「……クラリスも見えちゃった? 実は僕もなんだけど……」

「…………」

「…………」


二人の間に沈黙が流れる。


「ま、まぁこんな所で止まってても状況は変わらないし、ここは覚悟を決めて先に進もうか……。もしかしたら二人の気のせいって事もあるしね……」

「そ、そうね。他のお客さんの迷惑になっちゃうかもしれないし私も覚悟を――」


そう言いかけたクラリスの後ろから、地面を擦りながら何かが近づいてくる音がする。その音は段々と近づき……。


「…………グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」


いきなり奇声をあげて高速で地面を這いずって来た。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」


これにはさすがに僕も度肝を抜かれた。

クラリスと一緒に全速力でダッシュし一目散にその場から立ち去る僕達。怖すぎて心臓止まるかと思った。

さっきの場所から大分離れた所でクラリスと止まり呼吸を整える。


「はぁはぁはぁはぁ…………し、死ぬかと思った。全速力で走ったけどクラリス大丈夫?」

「はぁはぁはぁはぁ…………無理…………死ぬ…………お昼ご飯あんなに食べなきゃ良かった…………急に走ったから…………結構やばいかも…………ぅぷ…………」


クラリスはかなりグロッキーなご様子。そりゃあんなに食べた後に走れば誰でもこうなるだろう。実際僕も割と危ない感じだ。


「少しここで休憩してから行こうか。僕も休憩しなきゃちょっとキツイから……」

「そうね……そうして貰えると助かるわ……」


そんな事をクラリスが死にそうな顔で言ってくる。

お化け屋敷はまだまだ長い。

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