第22話 飲み会

「ふぅ〜。今日の仕事やっと終わったぁ〜」


現在の時刻は午後6時半。今日は特筆するような事がなかったので、珍しくこんな時刻からのスタートだ。


「サラの仕事終わったかなぁ……?」


下の事務は仕事の波が激しい部署で、少ない日はとことん仕事が少なく定時の30分前には仕事が全て片付いてしまう。が、残業のある日は私の酷い時と同じ時間ぐらいまで残され、みんなヒイヒイ言いながら仕事をしている所を見た事がある。

果たして今日はどうなのか……。

そんな事を考えながら事務の場所まで行くと、忙しそうにサラとその同僚達がまだ仕事をしていた。皆かなり集中しているようだったが、サラの進行度を聞いておきたかったので


「サラ、あとどれぐらい掛かりそう?」

「……魔王様ですか。申し訳ございませんがもう少々時間が掛かるかと思います。いつもの場所で待って頂けると助かるのですが……」

「分かったわ。頑張ってね」

「お手数お掛けして申し訳ございません。ありがとうございます」

「いいわよ。いつもの場所で待ってるわ」

「了解です」


サラに挨拶を交わした後、私は魔王城から少し離れた所のベンチに腰掛ける。サラのもう少しは大体15分前後の事だ。それまで暇なので明日やる予定だった仕事を少しだけ進める事にした。10分ぐらい仕事進めているとサラがやってきて、私の肩に手を置く。


「おーまーたせっ!!」

「うわっ!? ……もう、びっくりさせないでよねサラ」

「ごめんごめん。砕けた感じで話すのが久々だから、ちょっとテンション上がっちゃってね」

「そう言われればプライベートで話したのなんて1ヶ月ぶりだものね。今日は沢山飲むわよぉ〜!!」

「そうね、明日の事なんて明日考えなきゃやってけないわ!! 私も沢山飲むぞぉ〜!!」


サラの音頭でワイバーンを召喚し、私を先頭に置いて我が家への帰路に付く。

十数分ワイバーンを走らすと我が家が見えてきた。


「確かクラリスの家って、あのオレンジ色の屋根の家よね?」

「そうよ、よく覚えてたわね。私なんてこの場所覚えるのに2週間ぐらい掛かったのよ? ロッゾがよく迎えに来てくれたのを思い出すわね」

「ロッゾ君はいい旦那さんね。…………あ〜あ……私もそろそろ結婚したいなぁ〜」

「サラはいい女なんだから彼氏の1人や2人なんてすぐ出来るわよ」

「そんな簡単に出来たら苦労しないわよ……。既婚者は余裕があっていいわよね〜。私なんてもう少ししたら行き遅れとか呼ばれ始める歳よ? 世間は厳しいわねぇ……」

「え、サラってもうそんな歳だっけ?」

「そうよー? クラリスが結婚するなんて言ってきた時は内心めちゃくちゃ焦ってたからね? 私達の仕事って出会いの機会全然無いし……」

「確かにそうね……。そう思うと私はめちゃくちゃ恵まれてたわ。私を貰ってくれたロッゾに感謝しなきゃ」

「そーよそーよ。いい旦那さんなんだから大切にしなさいよ?」

「分かってるって。……そろそろ降りるわよ」

「はいはーい」


家の近くの森にワイバーンを着陸させ、サラと自宅を目指し少しだけ歩く。

だいたい5分も歩けば到着するだろう。


「鍵出すからちょっと待っててね…………はい、ただいまー」

「お邪魔しまーす」

「おかえりー。サラさんもいらっしゃい」

「今日はどんちゃん騒ぎまくる予定なんだけど大丈夫?」

「全然大丈夫だよ。サラさんも遠慮せずに飲んで下さいね」

「ありがとうロッゾ君。じゃあクラリス、さっそく飲み始めましょうか」

「そうね。私は着替えてくるからロッゾはご飯の準備よろしく。私ので良ければ着替あるけどサラはどうする?」

「ん〜、私はいいわ。久しぶりにロッゾ君とお話したいし」

「おっけー。それじゃあ着替えてくるね」


そう2人に言って階段を上る。

今日は楽しい飲み会になりそうだ──

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