第32話 結婚記念日 その 8
「はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った……」
「ご、ごめんねロッゾ? ちょっと調子に乗りすぎちゃったかなぁー私……?」
「だ、大丈夫だよクラリス……少し休めばへっちゃらだから……」
クラリスがコーヒーカップで暴走してから数分後、僕は瀕死の状態でコーヒーカップからの帰還を果たした。幸い吐かずには済んだものの、僕の精神的および肉体的なダメージはかなり大きい。
「…………ふぅ、お待たせクラリス、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」
「うぅん、私こそ回しまくってごめんね? それじゃあ気を取り直して次行きましょうか」
「そうだね、次はどこにしよっか?」
「んー、やっぱこれじゃない?」
「ジェ、ジェットコースターか……。最近はクラリスのワイバーンにもちょくちょく乗るようになってきたし行けるかなぁ……」
「多分大丈夫よ、ロッゾが乗ったワイバーンの方が早いはずだから」
「え、そうだったの?」
「そうよ? だってほら、この園内図の説明に最高時速書いてあるでしょ? ロッゾがのったワイバーンはこのジェットコースターの倍は早いわよ?」
つまり今まで僕は安全ベルトなしでジェットコースターより早いワイバーンに乗ってたのか……。今度からは安全ベルト付きのワイバーンに乗せてもらお……じゃないと心臓にすっごく悪い。
「そういうことなら大丈夫かな……?」
「それじゃあ早速ジェットコースターに向かいましょ‼」
そう言い終わるや否や、クラリスが嬉しそうに僕の手を引きながら歩き出す。今日のクラリスは、普段あんまり見せない様な顔を良く見せてくれる。普段はもっと疲れたような顔をしてるけど今は純粋な子供みたいに曇りのない笑顔だ。クラリスは心の底から今日を楽しんでくれているのだろう。やっぱりクラリスは笑顔の方が似合うよ。
「ねぇクラリス」
「ん? どうしたのロッゾ?」
「クラリスはさ、魔王様やってて楽しい?」
「え、急にどうしたのロッゾ?」
「いや、何となく気になってね。いつも疲れてるみたいだし……」
「うーん……やっぱり大変だし辛いって思う時もあるわよ? でもね、仕事が嫌いなわけじゃないの。なんだかんだ言ってもサラと一緒に仕事するのは楽しいし、家に帰るとロッゾがご飯作ってくれてるでしょ? それが私にとっての当り前だし、私にとってはその当り前が幸せなの。だから仕事も辛くないし、ロッゾも負い目を感じる必要は無いわ。子供ができた時に『ママは魔王なんだぞぉ~すごいでしょ~』って感じに自慢もしたいしね」
「そっか……そうだね、クラリスらしいや。急に変な事聞いてごめんね、気を取り直してジェットコースターに行こっか」
「うん‼」
クラリスは再び嬉しそうに歩き出す。
やっぱりクラリスは笑顔が1番似合うな……。
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