第13話 クラリスの平日 その4

風呂場に着いた私は服を脱ぎ、シャワーで体を軽く流した後に湯船に浸かる。

少しするとロッゾが風呂場に入ってくる音がした。


「お待たせー。少しは酔いが覚めた?」

「遅いー。酔いなんてバッチリ覚めたわよ」

「それは良かった。先に体洗っちゃうね?」

「いいわよー。じゃあ、私が背中流したげるね」

「えぇ……。自分でできるからいいよ?」

「あぁん? 私のご奉仕を受けられないって言うの?」

「やっぱりまだまだ酔ってるね……。そんなに言うんだしここは素直に甘えようかな」

「全く〜。最初からそうしなさいよ〜。このこの〜」


苦笑いしてるロッゾの脇腹を肘で小突く。

ロッゾを椅子に座らせ、ボディーソープを手につけ泡をたてる。そしてロッゾの体を丁寧に撫で全身を洗っていく。


「どう? 気持ちいい?」

「うん。もう少し強くしても大丈夫だよ?」

「分かったわ」


ロッゾの要望通り、少し強めに体を擦る。そのまま手はロッゾのお腹の方へのび、ちょっとだけ割れている腹筋を触ってみる。


「ちょっ、クラリス!?」


腹筋をすりすりされて驚くロッゾ。そんなロッゾをよそに、胸板や肩の筋肉もすりすりしてみる。


「く、くすぐったいよ……? 今更だけどクラリスって筋肉フェチだっけ……?」

「か、勘違いしないでよね! ロッゾの筋肉だから好きなのよ! 他の男の筋肉はどうでもいいわ!」

「急にツンデレ入ったね……」

「う、うるさいわね! もうちょっとすりすりしてたいから前向きなさいよ!」

「はいはい。ホントわがままなお嫁さんだなぁ……」

「なに? 私の事嫌いなの? 倦怠期ってやつ? 拗ねて実家に帰っちゃうわよ?」

「それは困るなぁ……。僕はクラリスの事好きだけど、クラリスは僕のこと嫌い?」

「そんな事全然無いわよ! ちょー好き! 世界で1番好きよ!」

「僕もだよ。……さて、クラリスに体を洗ってもらった事だし、今度は僕がクラリスを洗おうか?」

「えー……。ひょっとして私の体にベタベタ触りたいの? ロッゾのえっちぃ〜」

「今日のクラリスは色々と暴走してるね……。まぁクラリスの体にベタベタしたいのは当たりかな」

「えっ、本気だったの!? ど、どうしよう!? 心の準備が……」

「ちょっかい掛けるだけ掛けといて対応は出来ないんだね……。嫌なら止めるけどどうする?」

「ぜ、全然嫌なんかじゃないけど……。うぅ……。今日はなんだかロッゾにもてあそばれてる気がするぅ……」

「クラリスが酔ってるからでしょ? じゃあ優しく洗うね」


ロッゾが手にボディーソープをつけ、軽く泡立てる。その後ロッゾの手は腰にのび、私のくびれを優しく擦る。


「ひゃんっ!? ……ロッゾぉ……。くすぐったいわよ……」

「ごめんごめん。もう少し強くする?」

「うぅん。このままで大丈夫……」

「了解」


そう言って、また腰周りを優しく撫でるロッゾ。少しゴツゴツしていて、男の人らしい手は心地いい。

しばらくロッゾの手の動きを堪能して頭がぽわぽわして来ると、ロッゾが腰の肉を軽くつまむ。


「ひゃっ!? …………ロッゾぉ? 何してくれるのかなぁ……?」


物凄い圧力でロッゾを睨む。どのくらいの圧力かと言うと、魔王がかなりキレた時ぐらいの圧力だ。おかげで酔いはすっかり覚めたが、私のお腹を触ったのは納得いかない。


「ご、ごめんクラリス」


ロッゾはたじろぎながら謝ってくる。が、私の怒りは有頂天。こんなものでは全然許せない。


「私が酔ってるからって調子に乗ったわね…………覚悟ッ!!」

「ごめんなさぃぃぃぃぃぃ!?」


ロッゾが目を瞑り身構える。

私は全ての怒りを手の方に集中させ、ロッゾの方へと勢い良く近づく。


「お、お許しをぉぉぉぉぉぉッ!!」


そうロッゾが叫ぶと同時に──

私はロッゾの脇腹をおもいっきりくすぐった。


「ちょっとクラリスッ!? こちょこちょはダメだからッ!!」


そう叫びながら悶えるロッゾ。いい気味だ。


「うりゃうりゃうりゃうりゃぁーッ!! 私のお腹の恨みーッ!!」

「ごめんなさぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」


無情にもロッゾの叫びが風呂場に響くのであった。

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