第12話 クラリスの平日 その3
長ったらしい無駄な会議が終了し、私は私服に着替えて職場を出る。
今日は定時に間に合った。いっぱいロッゾに甘えよう。ご飯食べて愚痴聞いてもらって、その後一緒にお風呂入ってマッサージして貰って……。考えるだけで楽しみだ。
そんな帰宅後の風景に思いを馳せながら、ワイバーンに乗り帰路を急ぐ。
朝と同じワイバーンを使ったので、およそ15分程で家に着いた。
「ただいまぁ!! 愛しのお嫁さんが帰ってきましたよぉ!!」
勢いよくドアを開け、やたらと高いテンションでそう叫ぶ。
「おかえりクラリス、今日は早かったね。夕飯もう出来ちゃってるから食べよっか?」
「私もうお腹ペコペコ。今日は定時で帰れるように必死に仕事したのよ。後でいっぱい甘えるから覚悟しといてね?」
「ご苦労様。あんまり甘え過ぎると明日辛くなるからねー?」
「分かってるわよ。さ、ご飯食べましょ。今日のご飯は何?」
「今日は麻婆豆腐だよ。クラリス前に食べたいって言ってたでしょ?」
「そんな事すっかり忘れてたわ。良く覚えてたわね」
「愛しのお嫁さんの要望ですからね」
ロッゾが苦笑いを浮かべながらリビングに移動する。私は手洗いうがいを済ませに洗面所に向かい、その後リビングに行く。
「それじゃあ食べよっか」
「そうね。いただきます」
「いただきます」
まず、まだ温かい麻婆豆腐に手を付ける。スプーンでスープと豆腐を半分すくい、ご飯の上に乗せて食べる。辛さは控えめに抑えられていて、少しまろやかになっている。
「これおいしいわね」
「それはよかった。一応お代わりも少しあるから欲しかったら言ってね?」
「そうね……今日のおつまみと相談かしら。あんまり麻婆豆腐を食べ過ぎるとおつまみ食べれなくなっちゃうから……」
「そういう事ね。今日のおつまみはじゃがバタの予定だったんだけど、要望があるなら変更するよ」
「じゃがバタか……なかなかお腹に溜まるから悩み所ね……。どうしようかしら……」
「麻婆豆腐は無理に食べなくても大丈夫だよ? どうしても食べたいなら明日のお昼ご飯とかに回すけど……」
「それがいいわね。お願いできる?」
「もちろん。でも冷めちゃうから今日みたいに美味しくはないと思うよ。魔法か何かで温められればそれでもいいんだけどね」
「あるわよ、炎熱系の魔法。火力も調節できるし問題ないわ」
「おっけー。じゃあタッパーに詰めて冷蔵庫にしまってくるね」
そう言ってロッゾは厨房の方に移動した。
それにしてもこの麻婆豆腐、なかなか箸が止まらない。ご飯もすぐになくなってしまった。ワンタンスープも美味しく、10分も経たないうちに食事が終わってしまった。
「相変わらずクラリスはご飯食べるの早いね」
「今回はロッゾのせいよ。麻婆豆腐が美味しすぎてすぐ無くなっちゃったわ」
「喜んでもらえて何よりだよ。じゃがバタはもうすぐでできるからちょっと待っててね。先にお酒だけ出しとく?」
「一緒に食べたいからまだいいわ。早くじゃがバタ出来ないかなぁ……」
夕飯を食べたばかりなのにお腹が鳴ってしまう。やはりロッゾの作るご飯は美味しい。ロッゾに惚れたのも胃袋を掴まれたのがきっかけだ。あの時の料理また食べたいなぁ……。
昔の事に思いを馳せていると、ロッゾがじゃがバタとお酒を持ってくる。
「はい、お待ちどうさん。じゃがバタは一応お代わり作っといたから欲しかったら教えて。僕は洗い物しちゃってるね」
「わかったわ。……くぅ〜ッ! やっぱり仕事終わりの1杯は効くわねぇ〜」
「言動がオッサンだよクラリス。お弁当はいつも通りカバンの中?」
「そうよー。洗い物なんてちゃっちゃと済ませて、ロッゾも一緒に1杯やりましょうよ」
「今日は平日だから遠慮しとくよ。金曜日辺りに1杯やろうか、結婚記念日だしね」
「そうね……結婚してからもう1年。早いもんね」
「そうだねぇ……。そろそろ子供出来てもいい頃合いだと思うんだけどね」
ロッゾが何かを思い出したように苦笑いする。まぁアレだけロッゾから搾り取ってたらそろそろ出来てもいい頃だと私も思ってる。
そんな会話を続けて30分、お酒も尽きていい感じに酔いが回ってきた。
「さぁロッゾ! お風呂一緒に入るわよー!」
「はいはい、お皿片付けてからね。準備はしてあるから先に入ってて。すぐ行く」
「さてはロッゾ、私が1日着込んだ下着をくんかくんかするつもりね! ロッゾのエッチ!」
「エッチなのは一緒にお風呂入りたがってるクラリスの方だと思うんだけど……」
ロッゾが困惑しながら返事をする。そんな返事を聞き流し、私は若干ふらつきながら風呂場へと向かった。
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