第20話 社畜代表の平日 その6
リビングに向かうとテーブルの中央に鍋が置いてあり、その周りに味噌や皿が並んでいる。
「ロッゾ、今日のご飯は何?」
「今日はおでんだよ、時期的には少し早いけどね」
「おでんなんて久々ね。最後に食べたのは2年前ぐらいかしら」
「そうだね、多分それぐらいだと思うよ。懐かしいね」
「そうね。結婚する前にロッゾの家でいっしょに突いたのも2年前なんて、時の流れは早いものね」
「温かいうちに食べちゃおうか」
そう言ってロッゾが鍋からおでんをすくって私のお皿によそる。よそられた具材は大根にこんにゃく。卵に牛スジ。そしてもちきんちゃくだ。その後スープを注ぎ私の前に出される。とても匂いだ。
その後ロッゾも自分で具材をよそり、一緒に手を合わせて食前の挨拶をする。
「いただきます」
「いただきまーす。…………ハフハフ。これ結構熱いわね」
「そりゃぁさっきまで温めてたからねぇ。…………ん、自分で言うのもなんだけどなかなか美味しいねコレ」
「うん、ダシがしっかり染み込んでて美味しいわ。明日のおつまみにも欲しいわね」
「そりゃよかった、朝から仕込んだかいがあったよ。でも2日連続おでんでいいの?」
「美味しいから良いのよ。ロッゾも2日連続おでんでいいならの話だけどね」
「僕も特に問題は無いかな。同じ具材ばっかりだと飽きるし具材は少し変えるけどね」
「ありがと。それじゃあ今日はお酒無しにしとこうかしら。明日の楽しみにしたいし」
「分かったよ。その代わりと言っちゃなんだけど今日は長めにマッサージしよっか? 今日クラリスに届けたアロマキャンドルとは違う香りのやつも買ってきたんだよね」
「そうなの? それじゃあ早めにご飯を食べちゃいましょう。マッサージが楽しみだわ」
「おっけー。それじゃあ早めに食べちゃおうか」
「そうね。今日はおでん少なめにしようかしら。小腹が空いたらデザート食べればいいし」
「りょーかい。じゃあ少しは明日の分にとっとくね」
そう言ってロッゾがいくつかの具材を皿に移し、ラップを被せて冷蔵庫にしまう。
私は大根の次にこんにゃくを掴み口に運ぶ。続いて卵、牛スジと食べていき最後にもちきんちゃくを食べる。
本当にお酒が欲しくなるが、これも明日の楽しみの為だ。心を鬼にして我慢する。
ロッゾも少しするとおでんを食べ終わり、明日の具材を考えながら鍋を片付けている。
「先にお風呂入っちゃうね」
「はいよ。着替え出しとくね」
「お願い」
いつものやり取りを済ませ私が先にお風呂に入ることになる。今日は結構汗をかいたので早いところシャワーで洗い流してしまいたい。
服を脱ぎ、先にシャワーで軽く汗を流したら少しだけ湯船に浸かる。その後湯船から出て体をしっかりと洗い、頭を洗って再び湯船に浸かりゆったりと過ごす。
「ふぅ〜、今日も疲れたわねぇ……。明日はサラと飲むから一日のモチベーションは高く保てそうだけど、問題は来週の月曜日よね。休み明けの仕事は今から嫌になってくるわ……」
まだ5日も先の事に思いを馳せ憂鬱になってくる。
さっさと魔王止めてロッゾとぬくぬく2人で暮らしたいなぁ。もし私の子供が産まれたら3人か……。
でも人間と魔族では体の構造が若干違う。子供が産まれない事は無いが、確率としてはかなり低い確率だ。そんな低い確率ではあるが、私もロッゾも子供は欲しいと思っている。今のままでも十分楽しい。でも、子供が出来ればもっと楽しくなる。だから私は子供が欲しい。
もちろん大変な事も多くあるだろう。夜泣きに悩まされたり、生活のルーティーンが乱れたり。産まれた子供の学校や戸籍。たくさんの障害があると思う。でも、そんな大変な事を乗り越えて手に入る幸せはたくさんある。私は、その幸せを掴みたいのだ。
「やっぱり子供、諦めきれないなぁ……」
そんな、少ししんみりした気分に浸りながら、私は湯船から体を起こした。
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