26話 結婚記念日 その2
「クラリスー、朝だよ。起きてー」
今日はいつもと違ってクラリスは会社に行かない。が、休みの電話を入れなければならないのでいつも通りクラリスを優しく揺さぶって起こす。
「嫌だぁ……会社やだぁ……仕事もう要らなぃ……」
「まったく、今日は休みだって自分で言ってたのに……」
クラリスの零した寝言に苦笑いしながら、更にクラリスを揺らす。
「ほらクラリス起きて。今日はお仕事休みだから。ね?」
「…………ホントに休みぃ……?」
「ホントに休みだって……。ほら、会社に電話掛けるよ?」
「……んぅ…………ロッゾがやってぇ……」
「甘えん坊すぎやしませんかねぇ……というか結婚してる事言っちゃっても大丈夫なの?」
「…………ダメ」
「じゃあ自分で起きなきゃでしょ? ほら、連絡したら2度寝していいから」
「…………分かったぁ」
そう言って、布団からもぞもぞとクラリスが這いずり出てくる。ガチの寝起きなのか、千鳥足でふらふらと歩き出していてとても危ない。
「肩貸すからちょっと待ってクラリス!! その歩き方普通に危ないからぁ!!」
さすがに危ないと思ったので急いでクラリスに駆け寄り、肩を貸しながら歩く。そのままゆっくりとリビングの方に出てクラリスが寝ぼけながら使い魔を召喚した。
数秒するとサラさんと思しき人物が声を発する。
「もしもしー。クラリス?」
「……もしもし」
「元気無いね。こんな朝早くからどうしたの?」
「今日私仕事休むから……」
「うん、りょーかい……って、え!? 今日仕事休むの!?」
「……うん」
「マジですかー……分かった。結婚記念日なんだからしっかり楽しみなさいよ? あと悪いけどロッゾ君に変わってくれる?」
「……はい、ロッゾ」
そう言って小型の悪魔が僕の前にやってくる。クラリスが使っていた所を見た限りは何か特別な動作をする必要も無さそうなので、そのまま使い魔に話し掛ける。
「これもう繋がってるのかな? もしもーし?」
「もしもし、ロッゾ君? サラでーす」
「おはようございますサラさん」
「おはようロッゾ君。クラリスが元気無さそうだったけど、なんかあったの?」
「いや、ただ寝起きなだけだよ。クラリスが今日休む事怒ってる? サラさんには悪いけど、今日ぐらいはクラリスのワガママを聞いてあげても良いんじゃないかなぁと思って今日はお休みにしたんだ」
「そういう事ね。普段真面目に頑張ってるんだし、今日ぐらいは良いんじゃないかな? 私だってたまにサボるし」
「えっ!? サラさんってサボりするの!?」
「割とするよー? クラリスの3倍はサボってるんじゃないかなぁ? 意外だった?」
「すっごい意外。もっと真面目な人だと思ってたよ」
「仕事はしっかりやるけどやっぱり気分が乗らない日ってあるじゃない? クラリスは私みたいにポンポン休めないから大変よねぇ。ま、せっかく休み取ったんだからとことん楽しむのが1番よ。末永くね」
「ありがと。サラさんもお仕事頑張ってね」
「はいはーい。じゃあねー」
そう言って通話が切れ、その後に使い魔が魔方の中へと消える。
クラリスもようやく少しだけ目が覚めた様で、ソファに座りながらぐでーっとしていた。
「ロッゾォ、朝ごはんは……?」
「朝ごはん? テーブルに出てると思うんだけど……」
「あっ、ホントだ……。さっさと食べちゃいましょ」
「そうだね。今日は沢山出掛ける予定だから、覚悟しといてよね?」
「ドンとこーい……」
そんな力の抜けた返事を聞きながら食卓へと移動する。僕達の1日は、まだまだ始まったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます