第6話 嫁さんの休日 Day2 その2
朝食の洗い物を済ませた僕は、水をやりに畑へと向かった。
今日は元々入っていた予定は無かったが、3ヵ月程クラリスの御両親に挨拶をしていなかったので今日行こうと思う。クラリスの実家に行くのは、クラリスを嫁に貰えるかどうかを聞きに言った時以来だ。お義父さんとお義母さん元気でやってるかな?
一通り畑に水をやり終えリビングに戻るとクラリスがソファでくつろいでいた。
「今日クラリスの御両親に挨拶行こうと思うんだけど……クラリスは問題ない?」
「えっ、実家に顔だすの? 別にいいけど、どんな風の吹き回しよ」
「いや、最近御両親に挨拶出来てないでしょ? 元々予定も無かったしいい機会かなぁと思って」
「そういう事ね。それだったら、ロッゾのお義父さん達にも近い内に挨拶に行こうかしら」
「そうだね。最近僕も顔見れてないし、来週辺り行こうかな」
「じゃあお父さん達に、使い魔でこれから行く事教えとくね」
「お願い。僕は歯磨きして着替えてくるから、クラリスも新しく買った服とかに着替えといて」
「分かったわ」
僕は洗面所に行き、歯磨きを済ませて服を着替える。この前取れた野菜を少しお裾分けしたいので、ビニールに野菜を入れてからリビングへ向かう。
リビングには既にクラリスが居て、移動用の使い魔を外に召喚していた。恐らくワイバーンだろうか? めちゃくちゃカッコいい。以前クラリスの実家に行った時とは、また別のワイバーンだった。前回乗ったワイバーンはとても速く、本来なら数時間かかる場所にわずか30分で着いてしまう様なワイバーンだ。地形を無視して移動出来るので僕達にとっては一番の移動手段と言えるだろう。
その代わりしっかり掴まっていないと吹き飛ばされてしまうので正直怖い。まぁ慣れれば問題は無いのだろうが。
「お待たせ。それってワイバーン?」
「そうよ。以前乗ったのがあるでしょ?アレとはまた別のコだから」
「なんか違いがあるの?」
「前の子は速度が控えめだったの。ロッゾもワイバーンに乗るの最初だったしゆっくりの方がいいかなぁって」
「じゃあ今回のは?」
「今回のは速いワイバーンよ。前回の子と比べると倍近く速いわね。しっかり捕まって無いと飛ばされるわよ」
「あ、あれより速いのか……。落ちないように頑張るよ」
クラリスがワイバーンの背中に跨り、僕が抱き着く様な形でクラリスの後ろに座る。
クラリスの掛け声でワイバーンが飛び立ち、物凄い速度で大空を翔け出す。
風圧が全身にかかり、手がクラリスから引き剥がされそうになる。
一方クラリスはと言うと、しがみつくだけで精一杯の僕とは大違いで余裕そうだ。僕も早く慣れたいな……。
20分ぐらいだろうか。前回よりも早くクラリスの実家に着いた。
クラリスの実家はそこそこ大きく、二階建てだ。僕達の家も2階建てで普通の家だが、それより1回り程大きい。
クラリスが召喚したワイバーンを元いた場所に戻すと、自分の家の玄関に向かいインターホンを鳴らした。
10秒ほどするとバタバタと駆ける音が聞こえ、ドアが開かれる。
「どちら様で──ってクラリスじゃないの。早かったわね。ロッゾ君もこんにちは。立ち話もなんだから上がって頂戴」
「こんにちはお義母さん。お邪魔しますね。……あっ、そう言えばこれどうぞ。つまらない物ですが……」
そう言ってビニール袋に入った幾つかの野菜を差し出す。
「ウチの畑で作った物です。と言っても小規模な畑ですが。よかったら召し上がってください」
「わざわざごめんなさいね。美味しく頂きます」
お義母さんは、やはりクラリスの生みの親だけあってクラリスに似ていた。クラリス同様年齢を知らなかいが、今のクラリスにも負けず劣らずの美貌の持ち主だ。
軽い挨拶を済ませたら、お義母さんに案内されお義父さんがいるリビングへと向かう。
「アナタ。クラリスとロッゾさんが来たわよ」
「おぉ。随分と早かったな」
「ただいま、お父さん。久しぶりに顔見に来たよ」
「こんにちはお義父さん」
「クラリスにロッゾ君。よく来てくれたな。ゆっくりしていきたまえ」
お義父さんは低く、威厳のある声で僕達を歓迎してくれた。
お義父さんの容姿は僕が昔想像していた魔王そのもので、挨拶に行った時はチビるかと思った。正直今でも少し怖い。でも娘の事を心から愛している、普通にイイお父さんなので僕達の結婚を認めてくれた。
「クラリス、最近仕事の方はどうだ?」
「上手くやってるわよ。確かに仕事は大変だけど、家でロッゾが支えてくれてるからそれほど苦じゃないわ」
「そうか、安心したよ。これからもロッゾ君と力を合わせて頑張りなさい。ロッゾ君も、ウチの娘を支えてやってくれ」
「はい、もちろんです」
「ところで、クラリス達はお昼ご飯食べていくの? そろそろお昼ご飯作り始める時間だからついでに作るわよ?」
「折角だから食べていくわ。ロッゾもいいでしょ?」
「そうだね。僕も手伝いますよ」
「ありがとう。それじゃあ早速お願い出来るかしら?着いてきて頂戴」
お義母さんに案内されて、俺はキッチンへと向かった。
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