第7話 悪文と善文

善いことをしようとするのが善人だ、

悪いことをしようとするのが悪人だ、

とするとどっちもしないのはなんだろうね?

善悪の区別ってのが無いってことさ。

それは文面をそだてないってことでさ、

どいつもこいつも並べたてて、

うまいこといかない話をしてる。

舞台がある、役割がある、しなきゃならない、

そんな唐突に事が運ぶことばかりで、

毎度、毎回、葬式面。

シテイとマイは死んでしまったという、

記録が食われてしまうということは、

そいつは悪文だったということ。

勝てば名文負ければ悪文。

善人は前線にいられねえのだろうか?

「おい三等文士、記録はとれたのか?」

「ええ、ひどいもんですね、死者二百七十余名、

 うち百人あまりがトンベンマガスガトリクトの、

 腹ん中に収まっちまったって話でしょうに」

「そうか、おまえは辛気臭いことしか記録しないな」

「こういう役目はお互いさまでしょう?ねえ?」

「どこまでが文士の仕事かは知らないが、同じか」

「トマフ様は、どうでしょうかね?」

「さあな、また前へ前へ進むようだな」

前線、善人が記録されに行く、

伴った文士が名文士かもしれず。

「陰気な仕事だな、まったく」

「へへへ、死んじまえば皆そんなもんで」

だがもっと陰気な面ってのを知ってるさ、

「王陛下、いよいよですな、指揮を取られるので?」

そうさ一等文士は揃いも揃ってクズもクズ、

前に進むでもなく後ろから書きたてる記録を、

「そちの記録を見る限り、全軍をもてしての戦となろう」

三等文士はそのカスを書かされる、

見えたもの訊いたもの通り抜けたもの、

死んじまったものの惨状ばかりを記録して、

負け戦ばっかりに付き合わされるんだ。

「いえ、わたしの記録通りかはわかりませぬ 

 何せ家臣団様には直属の名文士様方がおられます故に」

「悪竜の名を知り直接見たおぬしに敵う者はおるまい」

「ははは、これは買いかぶりを」

どっちにしろ三等文士は報告書でてんてこ舞いになる、

一軍に立つのは、

「褒賞は弾もう、おぬしの記録、たのしみにしておる」

「はは、王陛下、シビリアンコントロール万歳!」

文面、字面の通りになる人々を文民統制、

シビリアンコントロールがとれてるという、

文が先にあったたという神のおぼしめしから、

作られた世界であるからして、文士、端くれ、

どのようなやからも、クエストを作り出す始末に、

最後にはゴミだめ、掃き溜めに文面が湧きたつ、

「二等文士、三等文士も仕事が多くなるぞ」

この駄賃ははかりごとの出来る奴からの恵みかとしると、

神も仏もあったもんではないと考える。

「伝令!」

「何事だ!?」

「悪竜が休息中の高台に向った一行が要ると!

 王国敷設のギルドから報告がありました!!」

「なんと」

「愚かな!?勇士は城に集えとの走り書きを読まなんだか!?」

「言い分、訊かずの出陣と文までしたためて」

「ばかものめ!龍を刺激するつもりか!?」

さて、これはどう記録するべきか、

「ひとまず様子をみるしかあるまいて」

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