第70話 悪魔王と魔王の差

「悪魔王セイカリテルか!」

「だれだ、人の名を簡単に呼んでくれるのは!」

「我は魔王ザザリアン!この大地を統治するものよ!」

「ザザリアン?訊いたことのない名だ、どこの魔族か?」

「どこの悪魔ともつかぬ貴様に教える必要などないな!!!」

すばやい槍の一閃がセイカリテルを追いこむが、

「なるほど、血の気の多い魔族もいたものだな、余の寝所にまで出向くとは」

「くらえっ!!!」

槍はセイカリテルをとらえようと軌跡を描くが、すんでのところを躱される。

「時にザザリアン殿はどこからいらしたのか、ゆっくり話でも訊きたいものだが」

「これは決闘だ! ぬけっセイカリテル!!」

「そうでしたか、ではこれでどうでしょうかな!!」

セイカリテルはすばやくツメで攻撃すると、二撃三撃とザザリアンに蹴りをお見舞いする。「ぐぉう、やりおる!?こいつ!!」「ザザリアン様!!」

光昭が見守る中でセイカリテルとザザリアンの戦いは極まり、どちらも長引かせはしないと、セイカリテル、剣を抜きはらい、構える。

「人間、よくみておけ、悪魔王と魔王の差というものをな」

「セイカリテル! 覚悟ぉぉぉ―――――!!!!!!!」

構えたヤリの連撃は悪魔王の手でなんども弾かれ、剣で受けて払われる。

「強い! どこでそのような腕を磨いた!?」

「魔王殿が寝ている間、とでもいいましょうかな、それっ!!!」

セイカリテルの剣撃は確かな重みとなってヤリを伝わり、ザザリアンに迫る。

「おのれかくなるうえは!!」「魔術を唱えるか、それもよし!!」

ふたりは詠唱を始め、同時に魔力を放った!!!!カッ!!!!!

「互角、か!? いや!?」

「余の法が上であったな、ザザリアン」「くっ」

「これからは余に従え、といっても貴様が効くとは思わぬが」

「ザザリアン様!」

光昭の瞬間移動でザザリアンは救出された。

「・・・・・・大胆不敵な輩もいたもの、あれが異世界転生人とやらか迷惑な話だ」

「悪魔王セイカリテル様!!」

「よい、賊は逃げた、おう必要もあるまい、もっとも貴様らに追える相手でもない」


いまや、悪魔王の蛮行は人類にたちどころに広まり、その愚行を倒す為に発注されたクエストの数、幾百万を越え、それらは、異世界転生人の元にも届いていた。

悪魔を畏れぬ者たちで結成された討伐隊が幾隊にもまして組まれ、その大半はユジリア同盟による助けによって派遣されたものものであり、魔法使いと転生人のタッグは強力である。 これを前にした悪魔王国ヘビュートは、

「ただの戦ではすまい、一度戦場に赴けば、先ほどのような輩がごまんと、余の首にめがけてやってくるに相違ないとすれば、この戦いもなかなか手ごたえのあるものになりそうだなカルモン!」

「はっセイカリテル様!!万事に備え、こちらも影武者を用意しての出陣となりますがいかがでしょうか?」

「構わん、貴様の好きにしろ、奴らとて、余がどのようなものかまだ詳しく知らんのだからな、ならば戦うにしても悠々と戦地に赴くも悪くはあるまい」

そして、

(悪竜は出でるか、この地におる悪竜使いめ、なにをするかもわかったものでない)

トンベンマガスガトリクトの鳴き声が轟いたのは超大国ユジリアだけのことではなかった、北の大地にもその噂があったため、一時的に、ユジリアとの国交を断って、悪竜退治の方法をヘビュートの王族たちは図っていたのだが、それも過去の事、今ある、悪魔王セイカリテルは莫大な威力と魔力を誇るあの悪竜の姿をききつけ、それを一等文士が操るものであると、ユジリアの魔法使いから聞き取っていたので、あえて、一等文士や文士たちを泳がせて、その動向を伺っていたのであるが。

(いっこうに動かぬ輩だ、何をたくらんでいる?)

幾重にも絡まる思いを巻き込んで、今や大戦間近となっていることもあって、

悪竜が出でることの懸念も増しに増してきている。

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