第37話 文章暗黒期
文字列は暗黒である
光が多い世界において、
びっしりと詰まった文字は、
光とは相反する闇である。
他の色であったにせよ、
これは消せぬ事実である。
太古、粘土板に刻まれた文字には、
色は無く、影であった、
人が足跡を残した世界にあって、
文字を描くことは暗黒を世界に産み出し続ける事に似る。
このため光輝く世界の為には文章よりも、
優先すべき、人の営みがあるということである。
「今日のご飯は何かしらねえ」
「雨が降ってきた洗濯物取り込まないと」
「傘が要るな、あっこで買って帰ろう」
「お金が無いや、財布置いてきちゃった」
なにもかもが人の営みの影である、
そこから文士は文字列を紡ぎだして世界を産み出した、
故に、文士はもっと文を描かなければならない。
クラリイナ、アンジュリィ。
「はい」「はいっておれたちは分かるのかい?」
もっと自由に文字列を描きなさい、
言語に支配されずに完全に自由にただ音を綴る様に、
「かしこまりました」「大丈夫かいクラリイナ?」
タドタドイクラカイニイジキサラットツイナクリキマナムセコリカスカンジュロイイシマテットマナイカンテンランデンカンランミンキンランモノイクリセイドトキジエイフミニイクトリモノイヤカンジナルツスモトニトノコエイォオイウクツォイウトキィツアウズキキジェポトドドルツクムミオヲクォイエイモヴィシフィジキミノオトソヂリキヌゥシュツムクシシシフェイィチオォクツルォルクイエイォモウツコィコツル
「違う、自由じゃないわこれでは」「だろう?うすうすわかってたんだ」
言語に支配されないということは、
ルールが無いということ、
ルールが無ければ人は走ることを嫌がる。
何事も決まり事が無ければ行動にうつせない、
人のサガがある、行動のタガがある、
それを外して生きる事はかなわないにもかかわらず、
すでにクラリイナとアンジュリィはこれを行ってしまった。
かくして、大きな闇に北の街が包まれてしまったわけである。
「書きたいこととは違うのよ、これでは」「だろう?どうしたい?」
「描きたいのは人の営みや暮らしだった」「でも闇だ本当に」
「だけれど個々にあってみえないものだから」「うまく照らせないんだね」
これは文明ではない、文暗である、
人々は互いに文字列を叫びあう中で暗がりに戻っていってしまった。
そこが一番居心地がよいかのように振る舞うことさえし出してしまった。
これは照らすことを続けるのではなく、覆うことで隠してしまうようである。
文章を紡ぐことで出来たヴェールを使い、人々を巧みに隠してしまった、
隠れた人々は前に出ることが出来ないままに、
その中で暮らすことになる。
それは人間を人間らしからぬ生態に追いやる行為だ。
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